前年度、地域保健との連携を積極的に行っている産業看護職10名を対象としたインタビュー調査を実施した。その際に得られたデータを用い、地域保健関係者と連携する際のコンピテンシー(技術・能力)について質的分析を行った。分析の結果、産業看護職が地域保健関係者との連携を進める場合、『日頃からの工夫や取り組み』、『連携の実際』、『会社への説明とその方法』、『産業看護職の姿勢や重要な視点』という4つの側面が存在することがわかった。また、その側面毎に「産業看護職から積極的に地域へ出向き、関係性を築く」、「従業員やその家族が今後、スムースに地域保健へ繋がるよう、的確な情報提供を行う」、「地域保健と連携する必要性と実際の効果について具体的に会社へ示す」、「従業員の人生や生活全体を捉えた上で対応策を考える」といった様々なコンピテンシーを抽出することが出来た。 さらに、これらのコンピテンシーの各項目について、妥当性を高めることを目的とし、インタビュー対象者に改めてご協力いただき、2回のフォーカス・グループ・インタビューを実施した。33のコード、9の中項目、3の大項目について、再度、見直し、項目の追加・修正等を行った。 本研究により初めて地域保健との連携における産業看護職のコンピテンシーが明らかになった。今後、情報提供や協働企画の提案等、産業看護職側からも、よりスムースに地域保健関係者との連携を行えるようになるためには、本研究で明確になったコンピテンシーを身に付けるための教育プログラムを構築し、広く教育の機会を設ける必要があると考える。
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