研究課題/領域番号 |
23593411
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
鈴木 良美 東邦大学, 看護学部, 准教授 (90516147)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 在日外国人 / 在日フィリピン人 / 乳がん / 参加型研究 / パートナーシップ / 協働 |
研究概要 |
1.在日フィリピン人乳がん早期発見プログラムの企画と実施:CBPR(Community-based Participatory Research)の原則に基づき、フィリピン人女性グループとの協働により、乳がん死亡数が急増している在日フィリピン人を対象とした乳がん早期発見プログラムを企画・実施した。今年度は、大阪の2市で自治体との連携によってプログラムを実施し計9名の参加者を得た。自治体との連携によって参加者が自治体のサービスをよりよく理解できる一方で、自治体からの呼びかけでは参加者が集めにくいことがわかった。2.成果発表:国際学会にて、プログラム前後での質問紙調査の分析結果から参加者のマンモグラフィの知識や受診への動機を高めたと考えられることを報告した。さらに、国内の学会にて、パートナーシップのチェックリストを用いた評価によってパートナーシップの成果を意識的に評価できたことを報告した。3.1年後の評価方法の検討:プログラム実施1年後の評価方法を検討した。当初は電話による事後評価を考えていたが、運営委員会で検討した結果、倫理的配慮も考慮し別の健康課題をテーマとした健康教育プログラムを開発し、対照群に提供することが望ましいという意見が上がった。そこで、更年期障害の文献レビューとともに、在日フィリピン人女性に更年期障害の認識に関して聞き取り調査を行ったところ更年期障害に対し否定的なイメージを強く抱いていることがわかった。この結果を踏まえた運営委員会での話し合いにおいて、参加者の募集が困難な更年期障害をテーマとしないこと、まずは乳がん早期発見プログラムの参加者を増やす工夫をし、参加者を集めるための工夫を丁寧に記述し発表していくこととした。CBPRは、相手の文化を尊重しながら討議を重ねて方向性を決定していく方法であり、これらのプロセスを記述していくことが重要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
在日外国人の健康向上の一助となる、中年期在日フィリピン人女性の乳がん早期発見プログラムを国内2ヶ所で実施、評価できた。これらのプログラムは、在日フィリピン人女性とのパートナーシップに基づき実施し、今後の方向性に関しても討議することができた。さらにプログラムの経過を国内外の学会で報告できた。
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今後の研究の推進方策 |
1.乳がん早期発見プログラムの継続:引き続き、フィリピン人女性グループ代表の長瀬アガリン氏、同グループスタッフ、東邦大学看護学部看護学科助教津野陽子氏らと討議を重ねながら、全国5ヶ所程度で在日フィリピン人乳がん早期発見プログラムを実施する。対象は、35-50歳位までの在日フィリピン人女性である。参加人数は1ヶ所10名程度を予定している。昨年度の経験を活かし、プログラムにおいては、参加者の集め方をさらに工夫する必要がある。フィリピン人の場合、仲間による口コミを信用する傾向にあるので、全国のフィリピン人グループのリーダーに依頼し、リーダーから参加者にちらしを渡してもらうなどがあげられる。これらの参加者募集の工夫や、参加人数などを詳細に記述する。2.学会での情報収集と発表:CBPRの進め方を継続的に学ぶために学会へ参加し、情報収集する。さらに、本研究での成果を学会で発表するとともに、論文を投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.在日フィリピン人乳がん早期発見プログラムの継続:プログラムを継続して実施していくために、(1)運営委員会を開催し、(2)プログラム開催地に出向いてプログラムを実施し、さらにこれらの(3)一連のプロセスを実施するための事務処理や文房具などの費用を要する。具体的には、(1)運営委員会の開催に関しては、参加者の旅費や謝金、郵送代等を要する。(2)プログラムの実施に際しては、研究代表者や津野氏、研究協力者への旅費、講師である長瀬氏の謝金、通訳への謝金、プログラム準備するための謝金や文房具代、郵送代等を要する。(3)さらにプログラムを実施するための書類作成、事務処理に関する謝金や文房具代などを要する。 なお、昨年度は、東日本大震災の影響で東北地方での開催が難しかったこともあり、プログラム開催回数が予定では3回であったものの、実際は2回の開催と、開催回数が少なくなった。そこで今年度は、開催回数を増やしていく予定である。2.学会での情報収集と発表:学会参加や成果発表のための学会年会費、学会参加費、旅費、論文執筆のための文献複写、書籍代などを要する。
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