研究課題/領域番号 |
23593411
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
鈴木 良美 東邦大学, 看護学部, 准教授 (90516147)
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キーワード | 外国人 / フィリピン人 / 参加型 / 乳がん |
研究概要 |
1.在日フィリピン人乳がん早期発見プログラムの企画と実施:CBPR (Community-based Participatory Research)の原則に基づき、フィリピン人女性グループとの協働により、乳がん死亡数が急増している在日フィリピン人を対象とした乳がん早期発見のための教育プログラムを企画・実施した。今年度は全国5カ所(大分県別府市、宮城県仙台市、岩手県大船渡市、岐阜県瑞穂市、埼玉県川口市)で地元のフィリピン人NGOや教会と連携し、プログラムを開催し、計65名の参加者を得た。ネットでの呼びかけでは4名と少なく、地元NGOや教会への信頼が高いと参加者が増える傾向にあるのではないかと推測された。 2.学会での情報収集:CBPRの進め方を学ぶために学会へ参加し情報収集をした。 3.プログラム参加1年後の調査方法の検討:在日フィリピン人乳がん早期発見プログラムの効果を測定するため、プログラム参加後、1年以上が経過した参加者に対する、乳がん検診受診の有無に関する調査方法を検討した。運営委員から、単なる調査ではなく、フィリピン人への何らかのサービス提供を含めて調査を実施して欲しいという要請もあり、乳がん以外のプログラムについて昨年度に引き続き検討した。在日フィリピン人女性へのインタビューなどから、在日フィリピン人女性の更年期の心身の変化に関する情報提供が求められており、グループによる情報共有が更年期への理解を促進するために有効であるがわかった。そこで更年期に焦点をあて、情報提供とグループ討議を組み合わせたプログラムを開発することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
在日外国人の健康向上の一助となる、中年期在日フィリピン人の乳がん早期発見プログラムを、在日フィリピン女性グループとの協働により、当初の予定どおり、全国5カ所で実施できた。在日フィリピン人からの信頼が高いNGOや教会との連携により、65名の参加者を得ることができた。さらに1年後の評価の準備として、更年期をテーマとするという方向性を見出すことができた。 課題としては、プログラム参加者は増えたものの、プログラム評価の一つである無記名自記式アンケート記入への不備が多いことである。参加者同士が仲間との話に夢中になるなどして記入が不十分な場合があるため、アンケート記入時の説明を工夫したい。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は研究最終年度となるため、以下の4点を計画している。 1.在日フィリピン人乳がん早期発見プログラムの継続:引き続き、在日フィリピン人女性グループの代表である長瀬アガリン氏、同グループスタッフと討議を重ねながら、全国2、3カ所程度で在日フィリピン人早期発見プログラムを実施し、アンケート調査もあわせて行う。対象は35-50歳位までの在日フィリピン人である。参加人数は1カ所10名程度を予定している。昨年度の経験を活かし、アンケートの記入の説明に留意する予定である。 2.実施前後の評価:乳がん早期発見プログラムの実施前後の評価を以下の二点から行う。第1に、プログラムの運営・実施方法に関して、これまでの実績や運営委員会の話し合い、パートナーシップチェックリストを用いて行う。第2に、アンケート結果に基づく対象者からの評価を行う。 3.プログラム参加1年後の調査:在日フィリピン人を対象とした更年期のプログラムを開発し、過去の乳がん早期発見プログラム参加者に対して更年期のプログラムを提供するとともに、乳がん早期発見プログラムへの参加1年度の調査を合わせて行う。開催場所は、参加者の多かった2カ所程度を選出予定である。 4.成果発表:本研究の成果を、学会にて発表し、学会でフィードバックを得て、論文投稿の準備をする。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.在日フィリピン人乳がん早期発見プログラムの継続:プログラムを継続していくために、①運営委員会を開催し、②プログラム開催地に出向いてプログラムを実施し、さらに③これらの一連のプログラムを実施するための事務処理や文房具などの費用を要する。具体的には、①運営委員会の開催に関しては、参加者への謝金や旅費、郵送代等を要する。②プログラムの実施に関しては、研究代表者や研究補助者の旅費、講師である長瀬氏と通訳者、研究補助者への謝金、プログラム準備のための謝金や、文房具代、郵送費を要する。 2.実施前後の評価:質問紙のデータ入力代、分析ソフトの購入代、データ整理のためのアルバイト代、文房具代を有する。24年度には、これらの評価をまとめるために使用する消耗品費を抑えることができたので、未使用額が生じた。25年度は、この未使用額でデータ入力、分析に必要なパソコンとプリンターを購入予定である。 3.プログラム参加1年後の調査:プログラム開発のための書籍代、翻訳代、プログラム実施時の研究代表者や研究補助者の旅費、講師である長瀬氏と通訳者、研究補助者への謝金を要する。 4.成果発表:学界における成果発表のための学会年会費、学会参加費、旅費、論文執筆のための文献複写、書籍代、翻訳代などを要する。
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