在日フィリピン人女性グループとの協働により、乳がん死亡数が急増している在日フィリピン人を対象とした乳がん早期発見のための教育プログラムを実施した。同プログラムは3年間で全国9カ所(2010年からの累積で14カ所)で実施し、計149名の参加者を得ており、下記のように、プログラムの評価方法を検討した上で、これまでの成果を分析・報告した。 1.評価プログラムの検討:乳がんプログラム評価の際に、別の健康課題をテーマにしたプログラムの開催を検討するため、在日フィリピン人女性の更年期に関する情報源や認識などについてインタビューを行った。しかし、研究協力を得られる対象が少ないという現状がわかり、更年期のプログラムを乳がんプログラムの評価に用いるには限界があることが示唆された。 2.参加者数の関連要因の分析:プログラム運営上、参加者数の予想が難しい現状があったため、開催地毎の参加者数への関連要因を実績に基づき検討した。参加者増加のためには、開催日時を就労者などに考慮し日曜午後とし、フィリピン人から信頼を受けているフィリピン人NGOリーダーなどの声かけが有効であると考えられた。この結果は、フィリピン研究会全国フォーラムで報告した。 3.質問紙調査の分析:プログラム参加者へ乳がんの知識や認識に関する質問紙調査を行い、回答の得られた130名(平均年齢40.8歳)のデータを分析した。その結果、乳がん・検診の知識や認識は、年代による差はなく、乳がん検診の経験の有無が影響していると考えられた。さらに、同プログラムは、乳がん検診のアクセスへの障壁を改善するのに有効であると考えられた。 4.現地協力者への聞き取り調査の分析:プログラムを開催した現地協力者へ聞き取り調査を行った結果、プログラムの波及効果として、地元の自治体の国際課などと連携して開催できた場合、終了後も継続的な効果が見られたことがわかった。
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