研究課題/領域番号 |
23593414
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研究機関 | 新潟青陵大学 |
研究代表者 |
中村 恵子 新潟青陵大学, 看護福祉心理学部, 教授 (10410250)
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キーワード | 養護診断・対応 / 心の健康問題 / 関係機関 / 連携 |
研究概要 |
昨年度までの研究では、新潟県のすべての養護教諭を対象とした質問紙調査を2011年9月から11月にかけて実施し(調査対象者:938人、回答者数:651人、回収率:69.4%)、子どもの心の健康問題における養護診断・対応プロセスと、養護教諭の経験年数や所有免許、勤務校の校種や幼児児童生徒数による養護診断・対応における違い、子どもの健康問題に関する学校外の関係機関や専門家との連携の現状と課題を明らかにした。 本年度は、新潟市及び近隣の市町村に勤務する養護教諭4名、スクールカウンセラー、生徒指導主事を対象に面接調査をし、子どもの心の健康課題における連携の在り方について考察した。 2012年8月に心の健康問題で関係機関や専門家と連携した経験のある中学校に勤務する養護教諭4名を対象とした面接調査を行った。連携プロセス上で養護教諭がどのような判断をしているのか、4事例について複線径路・等至性モデル(TEM)を用いて分析し、連携プロセスにおける養護教諭の役割について考察した。養護教諭は、①危険度・緊急度が高いか、②病的であるか、③校内対応には限界があるか(発達障害や家庭問題など)、段階的に関係機関との連携の必要性の判断をしている。連携の必要性の判断、関係機関に関する情報の提供、関係機関の選定、医療機関との橋渡しなど、専門家やコーディネーターとしての養護教諭の役割が重要であることが分かった。連携調査研究の成果は、学会に発表し、論文としてまとめた。 また、2013年2月にはスクールカウンセラー、3月には生徒指導主事への面接を同様に行い、心の健康問題で関係機関や専門家と連携した事例について調査した。現在、TEMによる分析を行い、論文としてまとめているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的の1つとして、「養護教諭が行っている養護診断と対応の実態を明らかにするとともに、学校外の関係者との連携の現状と課題を探る」ことを挙げている。昨年度の調査研究において、その目的を十分達成するができた。養護教諭を対象とした質問紙調査を実施し、子どもの保健室来室時における保健室来室者記録などの使用に関する実態や養護診断・対応プロセスを明らかにするとともに、関係機関との連携の現状と課題について考察することで、子どもの健康問題における連携の在り方に関する調査研究についての方向性を明確にすることができた。全対象者に調査結果と学会での発表資料について郵送して報告を行った。そのことにより、研究者及び養護教諭に広くこれまでの研究成果をお知らせすることができた。 今年度は、「養護教諭やスクールカウンセラー、医療関係者や福祉関係者などに面接調査し、子どもの健康課題における連携の在り方について考察する」という目的に向けて、養護教諭やスクールカウンセラー、生徒指導主事への面接調査研究を進めてきた。これらの調査研究の成果を学会において発表したり、論文としてまとめたりしている。関係機関との連携の必要性の判断、校内の支援体制、関係機関との選定、保護者との連携、関係機関との連携などの課題が分かり、養護診断・対応のマニュアルやチェックリストを作成するために必要となるデータや新たな知見を得た。医療関係者や福祉関係者などへの面接調査は、これから行う予定である。 「養護教諭や関係機関の意見に基づいて、養護教諭が実際の養護診断や対応時に活用できるマニュアルやチェックリストを開発し、連携における対応システムを構築する」ために、今後の研究デザインの作成、研究協力者への協力依頼、報告書作成の予算見積もりなども進めていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の目的は、これまでに実施した質問紙調査や面接調査のよって明らかになった知見をもとに、心の健康問題における養護診断・対応のマニュアルとチェックリストを作成し、新潟県内の養護教諭に配布して、実践に活かすことができるようにすることである。 まず、マニュアルやチェックリスト作成に必要な情報収集を行う。専門書、論文で示されているマニュアルとチェックリストについての資料や、新潟市内の養護教諭が養護診断・対応時に使用している保健室来室者記録やチェックリストなどを収集する。また、精神科医やスクールソーシャルワーカーに、関係機関との連携の必要性の判断に関する面接調査を行い、連携の必要性の判断基準についての資料とする。さらに、教育相談センター、特別支援サポートセンター、発達障害支援センター、児童相談所、少年サポートセンターなどの新潟市近隣の関係機関に赴き、各機関の実情や関係機関の選定に関する情報を集める。 次に、収集した資料やこれまでの研究成果を比較検討し、相違点や問題点を洗い出す。校内連携及び外部の専門機関や専門家との連携を必要とする場合の対応システムの在り方も含めて検討し、マニュアルとチェックリストを作成する。作成にあたっては、研究者、現職教員、教育相談センターの職員に研究協力を依頼し、複数で検討していく。その後、小・中・高校の養護教諭に研究協力を依頼し、マニュアルとチェックリストを活用した実践を行ってもらい、使用の効果を検証する。必要に応じて修正を加える。 最後に、これまでの調査結果を含めて、報告書としてまとめる。報告書の作成には、心の健康問題に関する専門分野の研究者からも協力していただく。報告書は、新潟県内の養護教諭に配布する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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