研究課題/領域番号 |
23593420
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
三橋 睦子 久留米大学, 医学部, 教授 (50289500)
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研究分担者 |
津村 直幹 久留米大学, 医学部, 講師 (50227469)
大坪 靖直 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (60223880)
佐藤 祐佳 久留米大学, 医学部, 講師 (40368965)
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キーワード | 公衆衛生 / 災害 / 看護学 / 危機管理 / 感染症 |
研究概要 |
研究I:ガイドラインの作成 これまでの調査を基に専門家による協議会を開催し、課題について抽出し、カテゴリーを検討している。現在作成中。 研究II:九州北部豪雨災害公衆衛生活動と調査 2012年7月の九州北部豪雨災害で上水道が遮断された被災地へ、感染防止グッズを活用した公衆衛生活動とアンケート調査を実施した。対象は、Y地区の給水車運行エリア200世帯で、災害直後から1カ月後までに、支援・調査員が対象者宅を訪問し、書面により同意、回答が得られた49名である。男性17名女性32名、平均年齢は、60.2±14.4歳であった。発災後の概ね1カ月後,2か月後,6か月後,8カ月後の4回で実施した。 結果、①本対象地域では、インフルエンザ、赤痢・ノロウイルス等のアウトブレイクは発生しなかった。2カ月後の水環境は、1カ月後に比べ、概ね94%から51%が改善していた(p<.001)。②感染症リスクイメージは、井戸水、家屋の水害、簡易水道あり群で得点が高かった(p<.05)。③一般的精神健康状態は、全過程を通して時間と共に低下し(p<.05)、特に8か月後において著名な低下を認めた(p<.05)。また、「現在飲料水として井戸水使用」の対象者に強い影響を認めた(p<.05)。考察すると、①対象地域では30年程前に集団赤痢が発生し、現在も下水道管理ができていない。そこで、赤痢のリスク認知を尺度としたが、むしろ被災状況の劣悪さが、一般精神健康状態に強く影響していた。②もともと、上水道と言っても簡易水道で管理されている地域であり、山や川の水を生活水として活用することが日常であった地域だが、「水質は大丈夫でしょうか」等の声が聞かれ、心理調査からも水環境の改善が心理面に影響していることが推測された。心理的回復は、概ね復興状況と一致し、本事例においては8カ月程度を要していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度はガイドラインを完成予定であったが、7月に九州北部豪雨災害が発災したため、地元であることもあり、当初予定になかったが、これまでの知見を基に、ライフラインがストップした地域(八女地区)への公衆衛生支援活動及び調査を実施した。そのため、ガイドライン作成のための協議を1回のみしか開催できておらず、現在完成に向けて取り組んでいる。 急きょでの調査ではあったが、八女地区での公衆衛生普及活動及び健康心理状態の調査により、これまでになかった、水質との関連性と影響について新たな課題が抽出された。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度から作成中のガイドラインの完成を試みる。そのため、各スペシャリストの意見交換および協議会を開催する。作成後は資料を作成し、過去の災害での適合性について吟味する。 ガイドラインについては、災害の種類、災害サイクル、地域制、対象の人口等の特殊性を考慮して、組織員で協議・検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)災害時における公衆衛生活動・感染制御ガイドラインを完成させる(協議会等の開催費用,旅費,謝金) 2)ガイドラインの内容から、各専門の組織員で評価尺度案を検討する。 3)パイロットスタディーを実施し、信頼性・妥当性の検証を行う。 4)各被災地での全国調査を実施する。事前に倫理委員会申請後、各施設代表者への承認を文書で得ることとする(調査票作成費用・郵送費・分析などの謝金)。 5)調査結果分析後、必要に応じて尺度の修正を行う(協議会等の開催費用,謝金と旅費)。 6)学会発表(旅費および参加費)
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