研究課題/領域番号 |
23593439
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
永井 眞由美 広島大学, 保健学研究科, 准教授 (10274060)
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研究分担者 |
東 清巳 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (90295113)
宗正 みゆき 広島国際大学, 看護学部, 准教授 (40309993)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 高齢介護者 / 心理・社会的孤立 / アセスメント / 支援モデル |
研究概要 |
本研究の目的は、高齢者を介護している高齢介護者の心理・社会的孤立予防のためのアセスメント方法と支援モデルを開発することである。平成23年度は、基礎調査として 2つの調査を実施した。 [調査I]目的:高齢介護者の心理・社会的孤立の実態とその関連要因を明らかにする。方法:広島県313名、熊本県202名の在宅要介護高齢者の介護者(65歳以上)を対象に配票留置自記式質問紙調査を実施した。心理・社会的孤立の測定にはUCLA孤独感尺度日本語版及びLubben Social Network Scale短縮版(LSNS-6)尺度を用いた。結果:心理・社会的孤立を感じた経験がある者は両県とも約3割であった。統計解析の結果、心理・社会的孤立の要因として、介護者の健康状態、外出能力、外出頻度、電話回数、地域活動への参加、経済的ゆとり、家族や近隣の協力等が関連していることが明らかになった。これらの関連要因は両県においてほぼ共通していた。 [調査II]目的:高齢介護者の心理・社会的孤立に対する訪問看護師の認識と支援内容を明らかにする。方法:広島県313名、熊本県217名の訪問看護師を対象に郵送自記式質問紙調査を行った。結果:高齢介護者の心理・社会的孤立事例に関わった経験のある訪問看護師は広島県が約8割、熊本県が約7割であった。心理・社会的孤立に気付いたきっかけは、介護者の話、表情、専門職からの情報の順であり両県とも同様の結果であった。両県ともケアマネジャーへの連絡は約9割であった。高齢介護者の心理・社会的孤立を発見する自信がある者は約5割、予防・支援について自信がある者は約4割で両県ほぼ同様の結果であった。 以上、2つの調査結果から、高齢介護者の心理・社会的孤立の実態とその関連要因が明らかになり、また、訪問看護における心理・社会的孤立の発見・予防・支援に関する教育の必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目的は、高齢者を介護している高齢介護者の心理・社会的孤立予防のためのアセスメント方法と支援モデルを3年間で開発することである。 平成23年度はその1年目にあたり、基礎調査として次の [調査I]と[調査II]の実施を目標とした。[調査I]:高齢介護者の心理・社会的孤立の実態とその関連要因を明らかにする。[調査II]:高齢介護者の心理・社会的孤立に対する訪問看護師の認識と支援内容を明らかにする。 結果として、本年度は予定通り、[調査I]と[調査II]を実施することができた。調査の回収率は、[調査I]、[調査II]とも4割~5割であったが、これには介護者の年齢特性や調査方法が影響しているものと考えられる。しかし、データ分析上の問題はなく、[調査I]では、高齢介護者の心理・社会的孤立の実態とその関連要因について明らかにすることができた。また、[調査II]では、高齢介護者における心理・社会的孤立に対する訪問看護師の認識及び支援内容を量的に明らかにすることができた。訪問看護師がかかわった事例の自由記述部分については、今後さらに質的に分析する予定である。以上の結果から、平成23年度の研究目的はほぼ達成できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は3年計画の2年目にあたり、以下のとおり研究を推進する。 研究目的:訪問看護師が高齢介護者の心理・社会的孤立予防・支援を行い、何らかの良好な変化がみられた事例(先駆的活動事例)について、訪問看護師が用いたアセスメント視点及び支援方略を明らかにする。 研究方法:広島県、熊本県において、高齢介護者の心理・社会的孤立予防・支援を行い何らかの良好な変化が生じた事例を経験した訪問看護師を対象に半構成的面接調査を実施する。対象数は、各県15名程度とする。面接内容は、事例の基本情報、心理・社会的孤立発生のメカニズム、訪問看護師のアセスメント視点、支援経過、支援方略、帰結などである。面接内容は、対象者の同意に基づいて録音し、逐語録を作成したうえで質的帰納的に分析する。 なお、対象の把握方法について、当初は平成23年度の訪問看護師への調査から把握する予定であったが、倫理的配慮として連結は行わないこととしたため、対象は新たに募集する。対象の把握は、昨年と同様に広島県、熊本県の訪問看護連絡会議等を通じて行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費の使用計画は下記のとおりとする。 [消耗品費]面接調査において必要なICレコーダ3台と記録媒体を購入する。[国内旅費]広島県、熊本県における研究協力依頼旅費、広島県、熊本県での面接調査旅費、共同研究者の研究打合せ旅費、平成23年度の研究成果発表旅費として使用する。[謝金等]研究協力者への謝金、面接調査のテープ起こし費用、データ・資料整理等に関する研究補助者謝金として使用する。[その他]平成23年度結果の学会誌への投稿費用、国際学会発表原稿に係る翻訳・校閲費用、文献複写費、各施設との通信費として使用する。 なお、次年度使用額が生じた理由は、1名の研究分担者が、共同研究者の研究打ち合わせ旅費1回分について、分担金配分時期との関係から所属大学の研究費を使用したためである。次年度使用額については、平成23年度に行った研究の成果発表数が予定より増加したため、国内旅費に追加して使用する予定である。
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