研究課題
本研究の目的は,高機能広汎性発達障害(high-functioning pervasive developmental disorders:HF-PDD)の24時間にわたる自律神経活動の変化を明らかにすることである。本年度は研究の2年目にあたり,前年度に引き続き対象者のデータ収集に努めた。コントロールである定型発達群では,詳細な傾向が明らかになった。定型発達では,交感神経活動は身体の活動に合わせて昼間活性化し,夜間は沈静化しており,明確なサーカディアンリズムを有していた。相対的に副交感神経活動は夜間睡眠中に活性化し,昼間沈静化していたが,睡眠の数時間前から活性化し,深夜最大となり,早朝には徐々に低下していた。また,昼食後に副交感神経活動が活性化する対象者があおり,二峰性のリズムを持つ者もいた。健常者の心拍変動について24時間観察した研究は少なく,昼食後に副交感神経活動が活性化する,睡眠の数時間前から副交感神経活動が活性化するなど自律神経のふるまいについての新しい知見が得られたことは意義深い。本研究は,HF-PDD患者は,覚醒中は常に緊張状態にさらされており副交感神経活動が抑制されているとの仮説に基づいているが,定型発達者でも身体活動の多い日中は抑制されており,その比較は容易ではない。そこで,昼食後や入眠前の,覚醒はしているが副交感神経活動は活性化している状態がHF-PDD患者にもあるのかを観察することは重要であると考える。今後はHF-PDD患者について,データを収集し,身体活動量や睡眠状況に注意しながら分析する必要がある。また,定型発達者についても対象者を増やしてコントロールデータをより確かなものにする必要がある。
3: やや遅れている
アクティブトレーサを他の研究者と共同利用していたため日程調整が困難であったこと,HF-PDD患者の確保が困難であったことなどが重なり,対象者のデータ収集が遅れた。
研究対象者の確保に努める。HF-PDD患者については,現在の臨床心理相談室だけでは十分な人数の協力者を得ることは困難と考えるので,協力の呼びかけを神経内科や精神科の外来にも拡大する。また,定型発達者についても対象者を増やしてコントロールデータをより確かなものにする必要がある。得られた結果は,随時,関連学会で発表していく。
次年度への繰り越しが216,320円あるが,これは研究協力者の確保が困難だったこと等により,研究進度が遅れたことによる。繰越金は平成25年度に上乗せする。平成25年度使用計画物品費(印刷消耗品)49,400円,成果発表のための旅費156,560円,翻訳・校閲のための謝金180,000円,その他,成果発表のための学会参加費28,000円,論文投稿料100,000円の合計513,960円