研究課題/領域番号 |
23593449
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
高橋 和子 宮城大学, 看護学部, 准教授 (00315574)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 地震災害 / 在宅療養者 / 健康被害 / 防災支援 |
研究概要 |
本研究は、防災支援システムの構築を図り、関係機関の連携により、震災時の在宅療養者の安全と、被災後の健康状態の悪化の抑制につながる平時における防災支援モデルを開発することを目的とする。 平成23年度は、既存の報告書・自治体資料、先行研究、関連文献から在宅療養者の防災支援におけるニーズの抽出を行った。また、平成23年3月11日に東日本大震災が発生したことにより、その後、公表された各種報告書・雑誌、研究論文等から、震災時の在宅療養者の状況や震災後の健康状態に関わる記載の抽出も加えて行っている。 東日本大震災以前の過去の震災に関する文献検討は、まず、GiNii学術コンテンツ・ポータブル、医学中央雑誌等を用いて該当論文の絞り込みを行った。その他、自治体の震災関連の報告書を入手し、震災後の在宅療養者に関わる健康被害の記述を抽出した。その結果、在宅酸素使用患者では、震災発生直後、停電や酸素濃縮機の故障により必要量の酸素供給がなされなかった事例や、長期的な影響として外傷後ストレス障害(以下、PTSD)など精神・心理的影響が報告されていた。重症心身障害児では、震災後亜急性期の時期に全身状態が悪化した例や、長期的に身体的変化が持続した例、養育者のPTSD様症状も認められていた。寝たきりの療養者では、震災後、寝たきり度の悪化など身体状況の変化が確認されていた。また、身体障害を有する在宅療養者の家族においても長期的な精神的影響を示唆する報告が認められた。全体的に、震災急性期における一過性の体調の変化とともに、長期的な影響として身体状況の悪化や、療養者のみならず家族介護者も含めて精神面への影響があることが把握された。 東日本大震災関連の報告については、各自治体・関係省庁においても、現在、実態を把握している過程にあり、引き続き在宅療養者の健康被害の把握を進め、過去の分析結果との統合を図る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災の影響により、文献収集の活動開始時期が遅れた。また、本研究では、平成23年度は、過去の震災の記録から在宅療養者の健康被害の記述を抽出する計画であったが、東日本大震災が発生したことにより、今後に貢献できる研究成果とするため、東日本大震災が在宅療養者に及ぼした影響を把握することは必須と考えた。そのため、記録の収集に多くの時間を割くこととなり、分析途上となっていることから、平成24年度の前半も引き続き記述の整理と分析を行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、主介護者を対象とした防災支援ニーズの実態調査を計画している。東日本大震災の経験を踏まえた調査内容となるよう、平成23年度から行っている健康被害の整理を進め、実態調査での把握事項を再考し、質問紙に反映する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は、自治体や関係機関に赴いての情報収集を計画どおり行うことができなかった。平成24年度は、これらの機関への情報収集も合わせて行っていく。
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