研究課題/領域番号 |
23593449
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
高橋 和子 宮城大学, 看護学部, 教授 (00315574)
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キーワード | 在宅療養者 / 家族介護者 / 防災支援 / 他職種間連携 / 地震災害 |
研究概要 |
本研究は、関係機関の連携による平時における在宅療養者の防災支援モデルを開発することを目的としている。 平成25年度は、在宅療養者の防災支援ニーズを把握するため、宮城県内の訪問看護事業所および居宅介護支援事業所の利用者の主介護者を対象に自記式質問紙調査を行った。調査内容は、基本属性の他、介護状況、在宅療養者に関わる災害に対する備えおよび対応状況などを把握した。災害の備えや対応については、文献検討や、先行研究において保健師、主任介護支援専門員、訪問看護事業所および居宅介護支援事業所の管理者に行ったインタビューから抽出された在宅療養において必要な災害の備えの項目をもとに調査内容を構成した。 7ヶ所の事業所の協力を得て395部配布し、269人の介護者から回答があった(回答率68.1%)。災害に対する備えは、介護用品や医薬品は、3日分程度の備蓄をしている割合が9割と高かった。一方、停電については、備えはあるものの発電機等の予備電源の使い方が分からなかったり、整備ができていない状況があることも把握された。また、災害発生時の移動等の手助けを近隣者に依頼していたのは2割弱であり、避難のための移動は困難と考え、不安に感じていたり、対応を諦めている介護者も見られた。災害発生時に必要な対応をサービス担当者等と確認している介護者は4割で、確認している介護者では、様々な備えを行っていたり、家族や近隣者、主治医とも、災害発生時の対応を確認している割合が有意に高かった。 以上の結果より、災害時に実用可能な備えを支援する必要性が確認された。また、備えを行う上で、日頃、関わりのあるサービス担当者と共に確認することも有効に作用することが推測された。平成25年度に行った地域防災活動に取り組んでいる自治体等からの情報収集の結果も踏まえて、平成26年度は、防災支援モデル案の作成と地域での介入を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度が東日本大震災の発生年となったことから、研究の開始時期が遅れた。平成24年度に在宅療養者の主介護者への質問紙調査を計画していたが、被災県での災害の備えに関する調査となることから、対象者の被災体験による心理的影響等も考慮し、平成25年度に実施した。調査協力機関・事業所の確保では、今後の協力体制の基盤づくりにもつなげるため、訪問看護事業所の他、居宅介護支援事業所にも協力依頼を行ったが、多忙等の理由により、協力の承諾を得ることが困難な状況もあった。調査期間を延長することにより、当初、予定していた対象数は確保できたが、全体的に、計画した時期より遅れて進行している。平成25年度に計画していた、地域防災活動に先駆的に取り組んでいる自治体等へのヒアリングは着手できているため、引き続き、情報収集を行うと共に、防災支援モデル(案)の作成や、今後の検討に活かしていく。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に計画している介入での取組みについては、介護者への質問紙調査を実施した事業所のある宮城県内の自治体から、地域包括支援センターからの支援も含めて、協力の承諾が得られている。また、防災支援モデル(案)の検討や今後の活動に関しては、災害看護での実践活動経験のある連携研究者に加え、自治体職員や実践家などからも助言を得て、多角的な意見を取り入れて進めていく。 平成25年度に行った調査結果は、学会発表を予定している他、関連学会への論文投稿に向けて準備している。
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次年度の研究費の使用計画 |
実施状況が、研究計画からやや遅れていることにより、地域防災活動や防災支援活動を先駆的に行っている自治体等からのヒアリングの実施数が、予定より少なくなっている。そのため、旅費や録音内容を文章化する作業等、データ整理の謝金の支出が少なくなっている。 平成26年度も地域防災活動や防災支援活動に取り組んでいる自治体や関係者からのヒアリングによる情報収集を継続する。また、在宅療養者・主介護者への防災支援モデルによる介入を予定している地域は、研究者が所属する研究機関と同県内ではあるが、やや遠方となるため、当初の計画よりも、介入での取り組みを行っていくための旅費の増額を予定している。
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