研究課題/領域番号 |
23593451
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研究機関 | 茨城県立医療大学 |
研究代表者 |
北川 公子 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (30224950)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 認知症 / 痛み / 終末期 / 緩和ケア / 苦痛症状 |
研究概要 |
今年度の目的は、療養病床等に入院する認知症高齢者の痛みの実態と、痛みの特定に際して看護師が認知症高齢者のどのような痛み行動に注目しているのかを明らかにすることである。研究デザインは、質問紙法を用いた量的記述研究である。対象病棟は、WAM-NETに登録している療養病床、老人性認知症疾患治療病棟、老人性認知症疾患療養病棟を有する関東地方の756病院のうち、承諾の得られた19病院43病棟である。これらの病棟に勤務する臨床経験2年以上の常勤の看護師を回答者とし、調査時点における担当患者のうち、身体的な痛みのある認知症高齢者について回答を依頼した。 結果、回答のあった痛みのある認知症高齢者数は135人であった。その内訳は男性33人(80.7±8.822歳)、女性102人(83.5±7.033歳)で、認知症の程度は、軽度14人、中等度28人、高度74人、最高度19人であった。痛みの原因として最も多いのが骨折(32.6%)、次いで関節拘縮(20.0%)、腰痛症(18.5%)、褥瘡等(12.6%)であった。痛みの評価に際して、把握可能と答えた看護師が最も多いのは「痛みの部位」(95%)、「痛みのおこる場面」(77.8%)であり、最も少なかったのは「痛みの種類」(40.0%)であった。さらに、看護師が着目した主な痛み行動は、「"痛い"など痛みについて言う」(88.1%)、「しかめっ面」(63.0%)、「眉間にしわを寄せる」(54.8%)などであった。 このほか、グループホームを対象とした痛みのある入所者に関する質問紙調査を行い、現在、データ入力中である。また、もう一つの研究課題である「認知症高齢者の終末期における苦痛症状評価指標開発」については、関東地方の訪問看護ステーションに勤務する訪問看護師に対する質問紙調査を、平成24年4月末を返送締切として実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.認知症高齢者の痛み評価指標開発 予想よりも協力の得られた病院数が少なかったが、協力の申し出のあった病院すべてに研究者が訪問し、説明を行ったうえで実施したことから、返送のあった質問紙にはほとんど無回答がなかった。この分析結果に基づき、2本の研究論文を作成し、現在、投稿中である。また、評価指標試案の作成と並行して、信頼性・妥当性検証に協力をいただく病院への調査協力依頼、および倫理審査申請を準備しており、当該課題については、予定よりも若干早めに進行している。2.認知症高齢者の終末期の苦痛症状評価指標開発 関東地方の訪問看護ステーションに勤務する訪問看護師を対象に、回答者の経験として、一般的な認知症患者の死亡前1年間の身体兆候・苦痛症状の消長について、質問紙調査を実施した。この結果に基づき作成した「認知症高齢者の終末期の苦痛症状リスト」を用いて、実際の利用者に適用してもらう質問紙を行う予定であったが、そこまで平成23年度内に実施することができなかった。当該課題については、当初の予定より少し遅れて進行している。1、2より総合して「おおむね順調」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1.認知症高齢者の痛み評価指標開発 認知症専門病棟3~5ユニットを対象に、入院患者、スタッフに協力いただき、評価指標試案の信頼性・妥当性検証を行う。具体的には内容妥当性、評価者間信頼性、再テスト法信頼性により検証作業を行う。 一方、グループホームデータに関しては、入所者の痛み保有率、原因、対処を分析し、今年度に病院で実施した分析データとの比較を行う。2.認知症高齢者の終末期の苦痛症状評価指標開発 24時間訪問加算を取得している東北地方を除く全国の訪問看護ステーション1000か所を対象に、今年度の調査結果から作成した認知症終末期の苦痛症状リストを用い、苦痛症状の実態を把握する。終末期における苦痛症状を、治療(胃瘻や点滴、鎮痛薬、酸素など)、入退院経験と合わせて、時系列での分析する。その結果に基づき、評価指標試案を作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.認知症高齢者の痛み評価指標開発 信頼性・妥当性検証のための調査打ち合わせ旅費(2万円)、協力者への謝品購入費(9万円)、調査票印刷(5万円)、データ入力費用(10万円)、論文投稿時の英文校正料・その他(10万円)として、36万円の経費を見込む。2.認知症高齢者の終末期の苦痛症状評価指標開発 調査票印刷・送付経費(30万円)、料金後納郵便費用(12万円)、データ入力費用(30万円)、研究補助・その他(20万円)など、1000件の質問紙調査の実施に要する経費として92万円を予定している。3.研究成果報告 学会発表時の旅費として8万円を予定。
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