研究課題/領域番号 |
23593451
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研究機関 | 茨城県立医療大学 |
研究代表者 |
北川 公子 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (30224950)
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キーワード | 認知症 / 高齢者 / 痛み / 苦痛 / 終末期 / 評価指標 |
研究概要 |
1.認知症高齢者の痛み評価指標開発 平成23年度はインタビュー調査と療養病床に入院する認知症高齢者の痛みの実態に関する質問紙調査を行った。インタビューではことば・音声、表情、身体表現、生活行為・動作、行動・気分、生理反応の6要素と36の下位項目(痛みサイン)を抽出し、続く実態調査に用いた。実態調査では、痛みのある認知症高齢者106名における該当率30%以上の痛みサインは6項目、該当率10%未満のサインも13項目あった。また、14項目の痛みサインは痛みの原因疾患別等分析、及び表出場面別分析にて有意であった。この分析結果を受けて、平成24年度はこれまで協力を得た病院7ヵ所で、看護師を対象に評価指標の妥当性を検討した。具体的には、各サインが痛みのある認知症高齢者を把握する評価項目として適切かどうかを、適切~全く適切でない、の4件法で尋ねた。結果、(おおむね)適切と回答した看護師の割合が75%未満のサインが17項目あった。 以上から、該当率10%未満で、疾患別等分析で有意差がなく、かつ適切性75%未満の5項目を削除して31項目に精選したうえで、該当率が高く、適切性評価も良好だった「痛みについて言う」「しかめっ面」「眉間にしわを寄せる」「手を当てる、抑える」「怒る、怒りっぽい」を共通項目、それ以外を個別項目として痛みサインを構成した。これに、痛みサインの表出場面や基礎疾患を連動させた評価枠組み試案を作成した。 2.認知症高齢者の終末期の苦痛評価指標開発 関東地方に所在する訪問看護ステーションに質問紙調査を行い、47通の返信を得た。現在、その結果を分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.認知症高齢者の痛み評価指標開発 平成23~24年度までの成果から、6群31項目で構成した「認知症高齢者の痛み評価指標試案」を作成した。その構成は、既往や観察場面との関連性も加味した新規性のある指標であり、評価項目と評価フレームはほぼ確定した。ただ、当初は評価者間の一致度など信頼性の検証まで行う予定であったが、なかなか協力機関を募ることができず、次年度への持越しとなってしまった。しかしながら、ユニークな評価枠組みの提案ができており、次年度で完成に至るめどがついた。 2.認知症高齢者の終末期の苦痛評価指標開発 訪問看護ステーションからの返信が予想より少なくはあったが、返信のあった47通の中には認知症高齢者の終末期の身体症状・苦痛症状に関して、詳細な記述がなされているものが多かった。これに基づき、評価指標試案を作成し、すでに看取り終えた認知症高齢者事例で検証を行う予定である。 以上より、「おおむね順調」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1.認知症高齢者の痛み評価指標開発 これまでの成果から作成した「認知症高齢者の痛み評価指標試案」の信頼性の検証を行う。検討項目は評価者間一致度と再テスト法である。病院5ヵ所程度、計20名程度の認知症高齢者の協力を得て、最終的な指標の構成項目の確認を行う。 また、平成23年度に実施し、平成24年度に分析まで至らなかったグループホームでの痛み実態について、平成24年度中にデータセットの作成まで至ったので、平成25年度はその分析を行い、グループホームと病院での痛みの実態を比較する。 2.認知症高齢者の終末期の苦痛評価指標開発 24時間訪問看護加算をとっている全国の500箇所の訪問看護ステーションを抽出し、「終末期の苦痛の出現状況」に関する質問紙調査を実施する。すでに看取り終えた認知症高齢者の事例について、死亡6ヶ月前以降の身体症状および苦痛の出現状況をあきらかにし、評価項目の精選を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.認知症高齢者の痛み評価指標開発 研究協力者への謝金(4万円)、論文投稿時の英文校正(5万円)、学会参加・研究打ち合わせ等旅費(15万円)、文献複写費(2万円) 2.認知症高齢者の終末期の苦痛評価指標開発 調査票送付費(30万円)、返信のための料金後納費用(15万円)、データ入力委託費(22万円)、研究補助(10万円)
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