1.終末期の進行プロセスと苦痛症状:認知症高齢者の予後半年以降の状態像の推移を把握する目的で、全国の訪問看護ステーションから系統的抽出を行った559施設を対象に2012年2月、質問紙調査を行い、47施設(回収率8.4%)から返信を得た。有効回答37件の分析の結果、死亡半年前の時点ですでに「ADL全介助」「褥瘡」「関節拘縮」「肺炎」のいずれかを呈する経過(I群12件)と、死亡半年前で「易転倒性」「睡眠・活動リズムの変調」のいずれかを呈する経過(II群25件)とに分かれた。II群の方が死亡半年前での自立度は高いが、死亡1~2ヶ月前になると、II群にも「褥瘡」や「肺炎」「ADL全介助」が加わってI群との差が縮まり、死亡1~2週間前、死亡1~2日前では両群の状態像はほぼ同じであった。「転倒」「褥瘡」「口腔内乾燥」など苦痛を伴うことが予測される身体徴候はほぼ全ての回答に認められたが、「疼痛」や「倦怠感」などの苦痛症状の記載は8件(21.7%)にとどまった。以上より、終末期における身体徴候の出現状況とともに、苦痛症状の評価用具の必要性が示唆された。 2.認知症高齢者の痛みの実態と痛み評価指標開発:認知症グループホームに入居する認知症高齢者の痛みの実態を把握するために、2012年2月、関東圏内の2620施設を対象に質問紙調査を実施した。返信は679施設(回収率25.9%)であり、うち563施設(83.0%)が「痛みのある認知症高齢者が入居している」と回答した。また、有効回答590施設の入居実人数が8945人、痛み保有者が1908人であり、グループホームにおける痛み保有率は21.3%であった。さらに今年度は、開発途上にある認知症高齢者の痛み評価指標(観察式)の精選作業を行った。その結果、当初の36項目から該当率が低く、疾患・障害特性や病棟特性を反映しない5項目を除き31項目を最終案とし、一致度調査を行った。認知症高齢者10人に用いたところ、評価者間の一致度は0.77であった。今後、評価マニュアルの充実を図る必要性が示唆された。
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