研究課題/領域番号 |
23593458
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
山田 紀代美 名古屋市立大学, 看護学部, 教授 (60269636)
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研究分担者 |
西田 公昭 立正大学, 心理学部, 教授 (10237703)
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キーワード | 聴力低下 |
研究概要 |
24年度は,聴力低下を早期に発見するためのスクリーニング尺度を開発する第二段階として,地域高齢者の純音聴力に加え語音了解閾値を測定し,高齢者の聞こえの自覚との関連を検討することとした。 対象は,A市の介護予防事業参加高齢者22人とした。調査は,年齢,性別等に加え,主観的聞こえについては,「自分できこえが悪いと思いますか」に思う,たまに思う,思わないの3択で問うた。純音聴力(以下聴力)及び語音了解域値検査(以下語音)は,オージオメータ(リオン社製AA-77)を用い,純音聴力は4分法(500Hz+1000Hz*2+2000Hz)/4を算出,語音検査は67-S表(数字語音表)を使用した。両検査は防音設備のある室で行った。 結果は以下の通りであった。対象者は,男性2人(9%),女性20人(91%),平均年齢は79.0±2.0歳であった。聞こえが悪いと思うかは「思う」が6人(27.3%),「時々思う」5人(22.7%),「思わない」が11人(50.0%)であった。平均聴力は右31.7±19.9dB,左30.3±18.4dBであった。語音の平均は右28.1±13.5dB,左28.6±15.5dBであった。平均聴力と語音平均値で10dB以上の差があった高齢者は左右各2人であった。平均聴力と語音平均値の相関は右r=.919(p<0.01),左r=.940(p<0.01)と高かった。主観的聞こえのレベルと左右の平均聴力及び語音平均値の相関はr=.760~.836(p<0.01)であった。以上から,純音聴力と語音了解閾値との相関が高く,高齢者においても,両者はほぼ一致することが確認された。一方,両聴力と主観的聞こえとの相関は高いものの,ずれのある高齢者の存在が確認できたことから,次年度はそれらの対象者について詳細に検討していく計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度に取り組んだ研究は、高齢者の聴力に関する純音および語音検査を含む聴力検査と主観的な聞こえの状況との間にずれが生じるとのこれまでの先行研究の結果について、その実態を把握するための調査を実施した。その結果は、本研究の研究動機として前提なる聴力と主観的聞こえの間にずれのある高齢者の存在は確認することができた。しかし、その理由や原因を把握するためのずれのある対象者への面接等までは対象者の協力が得られずに実施できなかった。 この状況に対して、ずれのある対象者へのアプローチ方法の検討に時間を要したため、人数を確保するための次の調査への着手に多少の遅れが生じてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は、24年度に実施した調査の追加の調査計画を立案し対象者数を増やし、本年度の結果について再度統計的に分析を行う予定である。さらに、純音聴力検査および語音了解閾値検査結果と主観的聞こえの関係において、ずれのある対象者数をより多く把握するために、基礎となる検査対象者をのものを増やすことが第二の目標である。そしてずれのある対象者に対して、質的に、また個別事情等から詳細に分析する予定である。 さらに、聴力検査方法についても、個人要因、環境要因を加味した高齢者の基礎的データを収集する予定である。 以上をもとに、聴力の実態をより簡便に表す要因を探索し、スクリーニングに可能な質問項目や調査項目、方法の探索を計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、地域在住の高齢者に聴力に関する質問紙調査および聴力検査を実施する計画であることから、そのための調査票配布、回収、およびデータ入力等の研究補助者に対する謝金、聴力検査を実施する場合における研究対象者の防音室完備施設へのタクシー移動代、アンケート調査および個別の聞き取り調査、さらには聴力検査の基礎的データを収集するための対象者への謝品代、またアンケート用紙の印刷等に費用を支出する計画である。さらに、過去2年間の研究結果を公表するための学会への旅費、参加費などへも支出予定である。
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