研究課題/領域番号 |
23593466
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研究機関 | 福岡県立大学 |
研究代表者 |
田中 美智子 福岡県立大学, 看護学部, 教授 (30249700)
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研究分担者 |
江上 千代美 福岡県立大学, 看護学部, 准教授 (50541778)
長坂 猛 宮崎県立看護大学, 看護学部, 准教授 (30332977)
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キーワード | 入眠時 / 自律神経反応 / 主観的評価 / 唾液コルチゾール |
研究概要 |
高齢者の睡眠の特徴は熟睡となるノンレム睡眠のステージ3やステージ4の減少が見られたり、入眠困難、中途覚醒及び早期覚醒などの睡眠障害が生じたりという報告がある。睡眠の研究は実験室での計測をしている実験が多いが、実験室での測定は通常の睡眠とは言い切れない。そこで、今年度は地域で暮らす高齢者の日常的な入眠時の状態を捉えるために、自宅での測定を行い、心拍変動解析を用いて、入眠時の自律神経活性について検討した。 地域で生活する高齢者6名を対象としたが、2名は測定機器の装着がうまく行かず、データとれなかった。残り4名は、男性2名、女性2名で、平均年齢72歳であった。入床時に、体温測定、唾液採取を行い、活動量のアンケートを記載し、ハートレートモニターを装着して、入眠した。朝までモニターを装着し、起床後に体温測定、唾液採取、睡眠状態についてのアンケートを記載した。ハートレートモニターからの心電図はローレンツプロット解析を用いて、L/T比を心臓交感神経系の指標、Log(LxT)を心臓迷走神経系の指標とし、検討した。 RR間隔の変化は2名は入眠とともに大きく延長し、その後、短縮するといった経過を示したが、残りの2名は徐々にRR間隔が延長し、経過に違いが見られた。自律神経系の指標についても同様で、入眠後の経過に個人間の変化が大きく認められた。また、睡眠の質を評価した主観的評価に関しては、4名とも7.5~9と良好の評価であったが、睡眠時間は300~410分、入眠までの時間は10~60分と様々であった。唾液コルチゾールは夜間低く、朝高く、正常な日内変動が見られた。高齢者の場合、個人の生活パターンが固定化していることも考えられ、個々人の睡眠を継続的に、かつ、日常生活の過ごし方を含めて丁寧に検討する必要があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高齢者を対象に睡眠時のモニターを依頼していた。自宅で測定するために、機器の操作を説明し、入眠前に装着してもらった。また、唾液の採取についても対象者に行ってもらった。実際、電極の装着やセンサーのスタートボタンの操作ミスなどで、データがとれていないケースが見られ、当初の予定に比べると完全にデータがとれている対象者数が少なかった。 また、唾液採取に関しては高齢であるため、採取量が少ないといったサンプルも見られた。各個人の個別性が大きく、生活パターンが固定化されているため、データのばらつきが大きく、一般化をするのが難しい状況である。個々人の睡眠を継続的に丁寧に見ていく必要性があると考えた。そのため、現在は一人の対象に対して、何度かの測定を行ってもらい、個人の経過を捉える試みを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の成果により、対象が高齢者の場合、生活パターンが固定化されているため、個人差が大きく、一般化をするのが難しい状況である。それで、個々人の睡眠を継続的に丁寧に見ていく必要性があるという考えに至った。そのため、現在は一人の対象に対して、継続的な測定を行ってもらい、ライフイベントとともに個人の経過を捉える試みを行っている。 また、当初、電極は、ベルトを胸に装着し、腕時計式のセンサーを手首に巻いて、スタートを押す方式のハートレートモニターを使用する予定であったが、高齢者でも簡単に装着できるモニター(My beat)を購入し、そちらでの測定を試みている。唾液採取に関しては、唾液が不足している対象には、現在、2分を目安に口腔内に含んでもらっているが、5分とし、それで唾液の分泌を調べることを考えている。 さらに、眼部への温罨法が高齢者の入眠前のケアに応用できないかを考えているため、まずは、成人と高齢者に対して、昼間に眼部への温罨法貼用を行い、貼用しない場合との比較をし、眼部への温罨法の影響について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費に関しては、個人の睡眠を継続的に観察するために、センサーなどの貸し出し期間が長くなることが考えられる。そのため、眠りスキャンを1台(136500円)追加、購入する予定である。また、ハートレートモニターを購入し、残りはメラトニンなどの唾液分析のkitを購入し、睡眠状態の評価にメラトニンが使用できるかについても検討する。また、高齢者と成人への眼部への温罨法を行うために、対象者への謝金に使用する。さらに、今年度はこれまでに成果を発表するために、イギリスで行われる国際生理学会に参加予定のため、その旅費などを計上している。
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