研究概要 |
研究者が開発した単純化した標準栄養バランス表(Satoh,A.et al.,Dietary guidance for obese children and their families using a model nutritional balance chart. JJNS, 4, 95-102, 2007.)を用いて肥満及び非肥満児童の食品摂取頻度を比較した。標準栄養バランス表は食品材料を肉・魚・たまご・牛乳(乳製品)・豆(豆製品)・緑黄色野菜・淡色野菜・果物・穀類・油・砂糖の11項目に分け、1,600kcalの理想的な食品配分を黒丸で示したものである。食品摂取頻度は実際の食物摂取数÷モデル栄養バランス表による食品摂取頻度(モデル比)で表しモデル比"1"を理想的な食品摂取頻度とした。対象者は34人の肥満児童と10人の非肥満児童であった。肥満児童の肥満度は50±21%、非肥満児童は3.0±8%であった。肥満児童の食品摂取頻度は食品材料11項目のうち、6項目において非肥満児童よりも有意に低かった(p<0.05~p<0.01)。食品材料11項目の平均食品摂取頻度は肥満児童0.9±0.4に対し非肥満児童1.3±0.4であった(p<0.01)。運動習慣を有する児童は肥満度が少なく(p<0.01)、非肥満児童は一日の平均テレビ視聴時間、ゲーム時間が短かった(それぞれp<0.05)(Satoh, A., et al. Diets of obese and non-obese children, Health, 3, 487-489, 2011)。本研究結果から、児童肥満は食物摂取頻度によってもたらされるのではなく、運動習慣、テレビ視聴時間、ゲーム時間などの生活習慣が影響を与えている可能性を示唆した。従って児童肥満を防ぐには運動習慣を推進することが重要であろうと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究者が開発した栄養バランス管理装置及び栄養バランス管理プログラムは標準栄養バランス表をコンピュータ化したものである。対象者の生年月日を入力し、年齢に応じたエネルギー量における栄養バランス分析を行う。1週間のうちの3日間の理想的な食品材料配分(肉・魚・たまご・牛乳(乳製品)・豆(豆製品)・緑黄色野菜・淡色野菜・果物・穀類・油・砂糖の11項目)がイラストで表示されている。摂取した食品材料または献立名を入力すると黒丸に変換される。また、モデルよりも不足な場合は白丸、多く摂取した場合は赤丸で表示される。このソフトは特許申請中である(特願2009-177380)。食事調査人数を大幅に増やすことができるため、より信頼性のあるデータを得ることが可能になった。平成23年度は児童の肥満と食品材料摂取数の関連を調査し、非肥満児童の食品材料摂取数が肥満児童よりも有意に多いことを明らかにし、児童の肥満は食品摂取の頻度ではなく、運動習慣が大きく影響することを報告した(Satoh, A., Sasaki, S. et al., Diets of obese and non-obese children, Health, 3, 487-489, 2011)。この結果は運動が制限される可能性がある高齢肥満者、高齢糖尿病在宅療養者にとって食事コントロールが運動よりも重要な因子である可能性を示唆したといえる。現在65歳以上の要支援状態の高齢者約100人を対象とし、肥満(BMI25≧)、普通(18.5≦BMI<25)、やせ(BMI<18.5)における食品摂取頻度を分析し、運動習慣を含む生活習慣との関連についてまとめている。また、肥満及び糖尿病の在宅療養高齢者に食事指導を行っており、介入者の体重とHbA1cは改善傾向である。従って研究計画の進度はおおむね順調であるといえる。
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