研究課題/領域番号 |
23593471
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
松下 年子 横浜市立大学, 医学部, 教授 (50383112)
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キーワード | 首尾一貫感覚 / 新卒新人看護師 / 看護管理者 / 離職防止 / SOC向上プログラム / 母親と父親 / 育児 / 看護専門職における自律性 |
研究概要 |
病院及び新卒新人看護師本人の同意が得られた対象者を、「SOC(首尾一貫感覚)向上プログラム」の介入群(90名)と非介入群(530名)の2群に区分し、両群のSOCと気分状態、看護専門職における自律性等の推移を2年間にわたって追跡した(質問紙調査)。また、そのうちの1部対象者に関しては、入職3年目においても同調査を遂行中である(平成26年度)。なお、介入群に対しては2年間で計5回の介入を行ったが(介入時ごとのアンケート調査と、最終段階のインタビュー調査も実施)、同時期に、離職率の比較的低い病院看護部の教育担当責任者を対象に、卒後教育・研修の体制や方針・工夫等の実態についてインタビュー調査を実施し、得られた知見を上記介入プログラムの内容に反映してプログラムの洗練化を図った。 以上の結果、新卒新人看護師のSOCおよび気分状態、専門職の自律性における変化が掌握され、離職防止に向けたプログラム等の実施内容、時期等に関して貴重な示唆を得た。特に、SOC向上プログラムの、SOCに関連した心理教育的アプローチ(講義)と、グループダイナミクスとピアサポートを視野に入れたグループワークの有用性が示唆された。 次に、新規計画として、管理職を対象とした同プログラムの有用性の評価を目指し、3病院の看護管理者を対象としたプログラム介入を年2回実施した。こちらについてもアンケートとインタビュー調査を通じて、プログラムそのものに対する高い評価を得た。 最後に、育児中の母親を対象としたSOC等の縦断調査は、妊娠初期から出産後5年目まで遂行した。補完調査として、母親・父親のペア(80ペア)を対象としたSOC縦断的調査も行った(妊娠初-中期、出産後1か月、4か月、1年、2年)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新卒新人看護師を対象とした2年間(一部3年間)のSOC追跡調査は、本年度も順調に進み、達成度は100%に近い。なお、本来は2年間の追跡予定であったが、「看護専門職における自律性」の変化が目覚ましかったことから、入職2年目以降の変化を掌握する必要性を認識し、現在も一部対象者に関しては、同調査を継続している。 次に、介入群に対する「SOC向上プログラム」の実施であるが、こちらも昨年度まで順調に進み、参加者の評価も予想以上に高かったことから、本年度はその成果について分析した。次に、一昨年度実施した新計画の離職率の比較的低い病院看護部の教育担当責任者を対象に、卒後教育・研修の体制や方針・工夫等の実態についてインタビュー調査を実施した件については、本年度は、その結果を反映した介入プログラムそのものの成果分析を行った。達成度は十分であった。 次に、看護管理者に対するプログラム介入を行った件も、予想以上に評価が高かったことから、引き続き管理者用プログラムの充実を目指す方針で計画及び考察を進めた。 最後に、育児中の母親を対象としたSOC縦断調査に関しては、6年前に調査をスタートさせた当初より対象者数は減少したものの、本年度は出産後5年目を追跡した。育児中の母親のSOCや気分状態、QOLの変化、特にSOCについては、妊娠期より高水準を維持し続けることが掌握されている。ただし質問紙回収において、一部遅延が生じた。さらに補完調査として実施した、母親・父親のペア(80ペア)を対象としたSOC縦断的調査であるが、こちらは継滞りなく継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
「SOC向上プログラム」の内容の充実を図るために、補完調査として、離職率の比較的低い病院看護部を対象としたインタビュー調査と、管理職者を対象とした「SOC向上プログラム」の介入調査を実施した。これらの結果から、今後は、新人看護師の離職防止はもとより、看護管理者を対象とした「SOC向上プログラム」の充実と周知が必要であることが推察された。それらの基盤とするためにも、一連の本研究所見を学会および論文等で引き続き発表していく。 さらに、上述したように一部の対象看護師には、入職後3年目の推移を引き続き評価していく(縦断的質問紙調査の継続)。加えて、育児中の母親を対象としたSOC縦断的質問紙調査も、平成26年度も継続するとともに、補完調査としてスタートさせた母親・父親のペアを対象としたSOC縦断的質問紙調査も継続していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
アンケート調査において、質問紙回収に一部遅延が生じたことから、全体所見の分析・評価・発表においてタイムラグと、未使用額が生じた。 上記アンケート回収を速やかに進め、その分析結果、評価を逐次学会発表、論文発表していく。そのための費用、さらに報告書作成の費用に充当する。
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