研究課題/領域番号 |
23593472
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
出口 禎子 北里大学, 看護学部, 教授 (00269507)
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キーワード | 戦争体験 / 学童疎開 / 集団疎開 / 心的外傷後ストレス障害 / ライフヒストリー |
研究概要 |
私たちがこの聞き取り調査を初めてから13年目を迎える。引き続き今年度も戦争を体験した80台前後の5人に聞き取りを行い、そのうち4人の逐語録の作成を終えた。戦後60年以上を経た今も、「本当は語りたくない」と訴える人や泣きながら語る人、戦時中に住んでいた土地には今もいけず、当時の関係者にも会いたくないとなど、それぞれに心の傷の深さが窺えた。彼らが戦争によって人生を変えられてしまったと考えている主な要因は、「教育を受けられなかった」ことや「自分の代わりに犠牲になって亡くなった人の関係者に責められたことや罪悪感」、「空襲で亡くなった家族が今も見つからない無念さ」などであった。戦争体験を語り継ぐ人たちは、体験の内容が個別的であるためか、体験を共有できる仲間同士で小さな集団を作り、それぞれに平和を語る集いや講演などを行っている。これらの活動にもできるだけ参加してきた。 今回聞き取りを行った5人のうち、一人は沖縄県在住の方であったが、沖縄には貧困や移民政策、沖縄南部戦の犠牲によって大量の孤児が生まれたことなど、学童疎開をめぐる特有の事情があることが分かった。また沖縄の学童疎開地は九州であったため、本土の疎開学童に共通の「ひもじさ」「寂しさ」「いじめ」の他、「寒さ」に耐えなければならない辛さが加わったという。沖縄市役所を訪ね、市史誌編集の担当者に戦争事情を聞き基礎資料収集も行った。 戦争体験者は高齢になっており、予定通りにインタビュー進めていくことは難しい。しかし25年度も引き続き、東京大空襲により戦争孤児になった人や学童疎開の体験者に聞き取り調査を行うと同時に、沖縄の疎開体験者の調査も並行して行っていきたい。現在、沖縄で戦争を体験した3人の人にすでに聞き取り調査の内諾を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は東京大空襲で親族を亡くし戦争孤児となった人の話を聞くことであった。「戦争孤児の会」の協力を得て、今年は戦争孤児3人の聞き取りを行った。またこれまでに聞き取りを行っていた2人の情報を加えて分析し、掲載論文として申請した。現在審査中である。
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今後の研究の推進方策 |
今年も疎開学童連絡協議会、九条の会、戦争孤児の会などに協力を得ながら、了解を得られた人には聞き取り調査を継続する。また、沖縄の市役所の方などに協力を得て聞き取り沖縄他の学童疎開体験についても調べる予定。現在、内諾が得られている3人の方の聞き取り調査は今年中に行う。その後、テープ起こし、逐語録の作成、研究連携者のスーパービジョンを受けながら、分析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
聞き取り調査の謝礼、滞在費、交通費の他、聞き取り調査協力者への謝礼、会議費など。関連学会への参加費及び、交通費。 関連著書の購入。 またパソコンのインク、USB、印刷用紙などの消耗品は随時購入する。 通信費(切手、はがき類)も必要に応じて購入する。
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