研究課題/領域番号 |
23593472
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
出口 禎子 北里大学, 看護学部, 教授 (00269507)
|
キーワード | 学童疎開 / 心的外傷後ストレス障害 / 沖縄戦 / 戦争孤児 / 戦争体験 |
研究概要 |
25年度は沖縄戦の体験者にインタビューを行った。沖縄市役所の市史編集担当者、南風原文化センターを拠点とし、5名の戦争体験者のインタビューを実施し、並行して逐語録を作成中である。 1.2回の訪問により女性2名、男性3名の沖縄戦の体験者にインタビューを実施した。調査対象者の年齢はいずれも70代後半から80代である。そのため病気や気候の状況で、インタビューが予定通りに進まないこともあった。25年度にインタビューを実施できなかった人は、引き続き今年度実施する予定である。 2.調査対象者5人のうち3人が学童疎開を体験していた。沖縄からの主な疎開地は、沖縄から比較的近い南九州であったが、特攻基地のある鹿児島を避けて熊本県が選ばれることが多かった。沖縄から九州に渡る間に、疎開船が撃沈されるという悲劇が繰り返され、親しい友人を亡くした人もいた。食料がないことよりも水がないこと、本土の寒さが辛かったという語りもあった。 3.本土では、学童が疎開している間に東京大空襲などで家族全員が戦死し、戦争孤児になった人が多かった。本土と沖縄では状況は異なるものの、太平洋戦争によって多くの孤児が生み出されていたという点では共通している。沖縄でも機銃掃射で死亡したり、集団自決などによって住民の4人に一人が沖縄戦で亡くなっており、その結果、多くの戦争孤児が生み出された。親しい人を失くした人も多く、死と直面した経験は深く記憶に残っている。戦争孤児のその後の生き方は想像を超える沖縄市の職員の協力で孤児院やキャンプの跡地、ひめゆり部隊が活動した外科病院跡を見学することができた。また26年度は、すでに内諾のとれている南風原村と読谷村の学童疎開の体験者にお話を聞く計画である。 また本土以上に「死」を身近に感じ生き延びて来た人たちの体験の様相とその後の人生への影響に焦点を当ててこれらの情報を読み込み、26年度の学会発表のための準備を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度より7名の聞き取り調査を行い、概ね順調に進行していたが、聞き取り対象者が80代と高齢のため、インタビュー予定日に体調不良や、介護問題が生じるなど、予想外の事態が発生し、計画通りに調査を行なえないこともあった。これまでにインタビューを終了したケースの逐語録の作成はすべて終えているが、すでに研究参加の内諾を得られている方の3名ほどのインタビューが終了していない。特に2013年度からは、沖縄戦の体験者の調査を始めているが、沖縄戦の体験者の語りを聞き、本土との違いや共通点など貴重な事実が明らかになってきているため、これらの事実をさらに明確にするため、1年の研究期間の延長を申請し、一人でも多くの体験者のインタビューを継続する。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度、科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)の補助事業期間延焼の申請が承諾されたため、聞き取り調査対象の人数や調査時期を見直し、沖縄戦時の子どもの体験とその体験が後の人生に与えた影響について聞き取り、考察する。 具体的には、2013年度から読谷村の学童疎開の会の担当者と打ち合わせを行ってきたので、この会から数名の体験者の紹介を受け、今年度中に沖縄を2度訪問してインタビューを行なう予定である。 同時に、これまでに終了しているインタビューの逐語録を分析し、「戦争体験とその後の人生への影響」という観点から、考察公表の準備を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
インタビューの対象者が80代と高齢であり、体調不良や介護問題などで予定をキャンセルせざるを得ないケースがあったが、うまく調整をすることができなかった。すでに研究協力の内諾を得ている人もおり、引き続きインタビュー調査を行う。 読谷村の学童疎開の会の担当者と打ち合わせを行い、数名の研究協力者を得る予定である。 今年度中に、2回、沖縄を訪問し戦争体験者にインタビューを行う予定である。助成金は、その際の宿泊、交通費、謝礼、うちあわせ会議に伴う費用、テープお越しなどに使用する。
|