海外の高齢者に対しても使用可能な英訳版疼痛評価ツール開発のために、マレーシアの有料老人ホーム1施設および英国の有料老人ホーム1施設に入居する鎮痛剤を使用している口頭で痛みの訴えができる65歳以上の高齢者を対象に、開発した疼痛評価ツールP-COPの英訳版を用いて、疼痛ケア提供前後に疼痛評価を実施した。 英国における疼痛評価ツール試用対象者の属性は女性2名、平均年齢は87.5歳であった。疼痛評価ツールへの記載を実施した評定者の属性は女性4名であった。疼痛評価ツール試用対象者に対して疼痛ケア提供前後に評定者が疼痛評価を試用した期間は1ヶ月間であり、評価場面は192場面であった。 マレーシアにおける疼痛評価ツール試用対象者の属性は、女性15名、男性5名、平均年齢は79.6歳。疼痛評価ツールへの記載を実施した評定者の属性は女性2名であった。疼痛評価ツール試用対象者に対して疼痛ケア提供前後に評定者が疼痛評価を試用した期間は1週間であり、評価場面は200場面であった。 疼痛に関する観察項目27項目のうち、入居者自身の疼痛の訴えと看護職による評価の関連では、攻撃的・不穏状態の4項目(ρ=0.30~0.66)、行動・動作の変化3項目(ρ=0.38~0.71)、表情と発声反応3項目(ρ=0.29~0.49)、身体的反応・生理的反応3項目(ρ=0.21~0.29)、顔色の変化2項目(ρ=0.30~0.56)の15項目において英国とマレーシア共に弱いながらも関連が認められた。この結果から、入居者本人の疼痛の訴えと評定者が評価した攻撃的状態、不穏状態、表情、発声反応、身体的反応、生理的反応、行動・動作の変化、顔色の変化との間に関連があり、これらの疼痛評価項目の妥当性が示唆された。しかし、関連がごく弱い相関にとどまっていた項目もあったため、観察項目の精選を行う必要がある。
|