研究課題
研究目的:認知症高齢者に対して抗精神病薬を使用する要因を明らかにし、薬物に依存しないケアを促進するためのケア・プロトコロールを作成する。1.質的アプローチによるデータ収集・分析:(1)認知症高齢者に対する抗精神病薬投与の功罪、(2)認知症高齢者に対する抗精神病薬投与の意志決定要因、(3)高齢者のBPSDに対する非薬物的介入の実際、(4)認知症高齢者に対する抗精神病薬使用の実態、これら4回の質的分析を行い、抗精神病薬には治療的メリットとケア提供側のメリットもあることが明らかとなった。抗精神病薬投与は副作用が薬効に勝るという先行研究を支持する結果となった。抗精神病薬投与の意思決定主因は「激しい行動症状の出現」であり、周囲囲への配慮が目的で処方されている実態も認められた。非薬物的介入では認知症高齢者を尊重し、経験知に基づく多様な方法を併用していた。また、認知症高齢者の行動症状の鎮静や安全と安寧のために抗精神病薬が使用されている実態や、ケアだけでは対処できない状況に直面し、[薬に頼らざるを得ない現実への葛藤」に苦悩する実情も明らかとなった。2.量的アプローチによるデータ収集・分析:質的データの分析から抽出されたカテゴリーにもとづき、質問紙を作成した。全国の認知症ケア病棟の医療・福祉職員927名を対象に抗精神病薬の使用状況と理由と抗精神病薬使用に関する質問紙調査を行った。その結果、質的分析と同様に薬物投与の問題性は認識しながらも状況の応じて使用せざるを得ない実態が明らかになった。3.ケアプロトコールの作成:以上の研究成果に基づき、ケアプロトコールを作成した。既存のケアプロトコールと比して大きな相違はない。日本では非薬物的ケアの重要性は十分に認識されているが、抗精神病薬使用の必要性も容認されており、非薬物的なケアの促進には多角的な介入が必要と考える。4.調査報告書の作成と配布(郵送)
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