研究課題/領域番号 |
23593483
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研究機関 | 園田学園女子大学 |
研究代表者 |
西本 美和 園田学園女子大学, 健康科学部, 講師 (20314495)
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研究分担者 |
大西 香代子 園田学園女子大学, 健康科学部, 教授 (00344599)
小松 明 帝京大学, 医療技術学部, 教授 (80075423)
田中 美穂 東邦大学, 看護学部, 助教 (80385567)
木村 聡子 園田学園女子大学, 健康科学部, 助手 (90524918)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | プラシーボ / 精神科医療 / 自律 / 質問紙調査 / 精神科医 / 精神科看護師 |
研究概要 |
プラシーボは全く害がない上に、実際に効果が現れることもよくあるが、服用する患者に説明をした途端に効果は期待できなくなるため、インフォームド・コンセントを得ることはできない。そのため、プラシーボは患者の知る権利や治療同意を尊重すべきという「自律の尊重」に反するが「仁恵」「無危害」の原則に合致するという倫理的ジレンマが生じることとなる。わが国におけるプラシーボ使用については、どうあるべきかの議論もなされず、その実態は何も知られていない。 精神科医療では長い間、患者に対して管理的な服薬行動をすすめて患者の自律性を妨げてきたが、現在は患者の能動性を尊重し患者自らがアドヒアランスを重んじる傾向に変化してきている。また、精神科でプラシーボが使用されるのは経験上、訴えがあいまいで治療が必要なくても患者が投与を希望する場合や過剰に薬物に依存する場合などがある。このような背景がプラシーボ使用にどのように影響しているのか、実態はわかっていない。 そこで、本研究では、まず精神科臨床におけるプラシーボ使用の実態と、投与の実態を担う医師・看護師の意識を把握したうえで、今後の望ましいあり方を検討することを目的に研究を進めている。 本年度は研究分担者(小松,田中)が一般科を対象として作成した質問紙をもとに研究代表者・研究分担者で打ち合わせ会議を開催し、精神科医療向けに修正を加えた医師および看護師対象の質問紙を作成した。その上で、本研究は本学の生命倫理委員会にて倫理審査を受け、承認を受けた。 現在は医療者に対する(医師・看護師)質問紙による全国調査の実施に向けて、準備をすすめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究分担者(小松,田中)が一般科を対象として作成した質問紙をもとに研究代表者・研究分担者で打ち合わせ会議を開催し、精神科医療向けに修正を加えた医師および看護師対象の質問紙を作成した。その上で本学の生命倫理委員会にて倫理審査を受け、承認を受けた。 パイロット・スタディを実施する予定であったが、本研究は倫理的問題を取り扱い、一部の対象者のみの実施では個人が特定される恐れがあり、個人情報保護等を遵守できない可能性もあるため、全国調査の実施に着手することにした。そして、発送準備として、アルバイトを雇用し、インターネットで都道府県別、規模別にて精神科病院リストを作成した。また、回収率を上げるため、研究対象者に対し、文具程度の謝礼を予定し、購入した。 現在は、全国調査の実施に向けて準備をすすめ、発送段階まできている。進捗状況はおおむね従来の計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は医師・看護師に対しての質問紙による全国調査を実施していく予定である。質問紙は倫理審査を経て準備できているため、質問紙および依頼文の印刷を実施し、都道府県別、病院規模別による精神科病院リストの中よりランダムに300あまりの施設を抽出し、送付予定である。発送はまず、各施設長・看護部長に対して研究協力の可否を確認する意向調査を実施し、研究協力の了承を得た施設に対して、医師および看護師への質問紙を配布する予定である。 本研究は倫理的問題をはらんだ質問紙を扱うため、回収率の低さが考えられる。そのため、質問紙の属性としては、性別、年齢、病院規模等を聞き、個人、施設名がわからないように配慮する。また、誰が回答したか、しなかったかも病院側にわからないように、一人一人が封書に入れて郵送によって回収する。また、回収率を上げるために研究協力者に対して、文具程度の謝礼を差し上げる予定である。 結果の分析は精神科医療施設におけるプラシーボの使用実態、医療従事者の意識、インフォームド・コンセントの有無を含んだ倫理的問題点を総合し、プラシーボ使用の全体像とその問題点を整理する。結果からプラシーボ使用時にどのような手続きを行えばよいのかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は全国調査を実施するため、研究費はその準備および結果の分析にかかる費用がほとんどである。 意向調査および本調査にかかる質問紙、依頼文、葉書、封筒等の印刷を外注にて実施する。そのため、印刷代および封筒、はがき、用紙等の物品・消耗品費が必要となる。そして、調査は精神科リストからランダム抽出した施設の責任者に対して研究協力の可否について意向調査を郵送し、了承した施設は葉書にて回答を返信してもらう。了承をした施設にのみ、質問紙を発送し、個人に配布していただく。そして、回答への強制を排除するために、個別封書にて回収していく。この発送作業事務のためのアルバイトを雇用するために謝金が必要となる。そして、意向調査及び調査用紙発送・回収のために通信費が必要となる。 また、回答数が多いためデータの入力は外注を予定しており、その謝金を計上している。 また、勤務施設の異なる研究分担者とは多くはメールを介して連絡を取り合うが、結果の分析および方針の打ち合わせ等にはその都度、会議を設けていく必要がある。また、看護科学学会での成果報告のために学会参加費および旅費が必要である。
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