本年度は、昨年度から引き続きで、職員が主体となり対象者の排便状況を把握し、アセスメントを行い、ケアプランの立案・実践・評価・修正を行っていった。さらに、研究者とのカンファレンスを通して評価し、ケアプランの修正を行っていった。今年度は、2事例について介入を行った。 1事例は(約半年の介入)、日常生活動作は自立している方であったが、排便時、トイレに長く入っている、いきむ声が聞こえることなどから非常に苦労して排便を行っているのではないかと介入を決定した。水分、食事、活動、など生活を整える中で自立し排泄行為を行っているためなかなか排便の確認が取れずにいた。しかし、職員の細やかな観察により便が出ていない時は食事の進みが遅かったりするということや「苦痛ないきみ」でなく排便のきっかけであること、飲水が1日1000ccを超えると本人からの便が出ないという訴えの頻度は減った。 さらにもう1事例は、排便状況の変化がなかなか現れず、約1年半の介入を続けた。重度の認知症を有しており、さらに身体状況も車椅子での移動が援助によって可能だが、意志の疎通が難しく、水分量を増やす、活動量を上げる、食物繊維の摂取といった基本的なケアを整えることが難しかった。そのため、下剤の頻度も変化なく、排便状況の改善にまでは至らなかった。しかし、対象者の生活を整えることの重要性は職員の認識として高まったのではないか。また、今後課題となっていくが、認知症を有し、虚弱な高齢者の便通を整え、体調管理していくには職員のきめ細やかな観察と忍耐強く対応するケア力が求められることがわかった。
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