本研究は、高齢化・多様化・複雑化する日本社会において、そこに暮らす人びとの生活構造や近隣、家族内の紐帯、身体観、死生観など地域の文化に根ざした”終の棲家”の在り方と、介護が必要になった時に最後にすむ場所としての”家”を包含した地域のなかでのケア・モデルを構築することをねらいとしている。日本のなかで人びとが、老いや病い、障害のなかで介護が必要になった時、どこで、誰が、どのようにケアに関与することができるのかを検討し、日本の社会のなかで持続可能なケア・システムを構築することが目的である。多様化する社会のなかで一定の社会的単位をもつネットワークの中に、どのようなケア・モデルを組みこんでいくことができるのかを、実践をとおして検討していった。終の棲家として”ホームホスピス”という家を選択した入居者と家族の思いをケアを行いながら聞き取っていった。またホームホスピスがある地域住民がどのような関わりを持っているか経過を記述しデータとした。さらにホームホスピスがある集落の住民に対し、全戸調査を実施し、そこに住む住民の年齢や居住年数、近所づきあい、介護の状況、規範などを調査用紙をもとに聞き取った。最終年度は、これまでのデータの分析を行いつつ推進委員会に所属する一定年度を経過した全国5箇所のホームホスピスの定款、パンフレット、新聞記事などもデータとして取り扱いながら、ホームホスピスの定義、特徴、そこで起こるケアによる入居者や地域住民の変化などをまとめ、学会などで発表した。既存の家屋を活用した居住空間、1軒あたり5~6人のケア、地域との関わり、看取りのケア、家族が看取ることへの支援、などが共通な要素として抽出され、その活動内容は「地域包括ケアシステム」そのものであった。ホームホスピスは少しずつ全国に広がりを見せており、社会的ニーズを考えれば今後ケアの基準と持続可能性をさらに検討していく必要がある。
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