研究課題/領域番号 |
23600002
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
山口 貴之 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (10375595)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 不安定核 / 陽子半径 |
研究概要 |
本研究は、理化学研究所の加速器施設RIBFのウランビームから生成される高エネルギー核分裂片量子ビームに対して、できるだけ多くの荷電変換反応断面積を精密測定し、これらの原子核中の陽子分布に対する半径「陽子半径」を決定する。荷電変換反応から原子核の陽子半径を導出する方法は、我々独自のアイディアによるユニークな手法による。高エネルギー重イオン反応は入射核と標的核の中の核子同士の反応の和で表されるため、荷電変換反応は入射核の陽子と標的核が反応する確率が最も高い。我々はすでにグラウバー理論を改良し、荷電変換反応から陽子半径を導く方法を得ている。不安定な原子核の陽子半径はこれまで唯一、アイソトープシフトの観測によってのみなされてきたが、生成量の多い、安定線に近い原子核だけであった。本研究によって、広範囲に不安定核の陽子半径を決定し、中性子過剰不安定核の殻構造の変化を系統的に議論する。平成23年度は震災等のため研究の出足が遅れたが、放射線医学総合研究所に於いて原理検証実験を行った。実験では、核子当たり約300MeVで、荷電半径が既知である安定核(ベリリウム、炭素、酸素同位体)とそれらの中性子過剰核に対して荷電変換断面積を精密測定した。荷電半径からグラウバー計算される理論値と得られた実験値を比較したところ、中性子ハロー核11Beを含む多くの核種に対して、スケーリング則が成り立っている事が分かった。この事を利用して、荷電半径未知の炭素同位体15C, 16Cの陽子半径を決定し、これらに中性子スキンが存在する事を世界で初めて示した(誌上発表)。さらにこの方法を中重核に拡張するため、現在、鉄やニッケル同位体の荷電変換断面積を系統的に研究している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
震災等によって研究の出足が遅れたが、放射線医学総合研究所に於いて既に一定の成果をあげる事が出来た。
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今後の研究の推進方策 |
放射線医学総合研究所に於けるテスト実験で既に成果が上がっているが、継続して理研RIBFでの実験に備える。具体的には理研RIBFで用いる大型電離箱の製作、試験を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
理研RIBFでの実験の準備のため、大型電離箱の製作のために使用する。
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