研究課題/領域番号 |
23600007
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三原 基嗣 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60294154)
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研究分担者 |
松多 健策 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50181722)
福田 光順 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50218939)
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キーワード | 核物性 / 超微細相互作用 / 不安定核 / 核磁気共鳴 |
研究概要 |
β線検出を用いた超高感度核磁気共鳴法(ベータNMR法)による、固体中希薄不純物に関する物性研究を推進するためには、核スピン偏極した短寿命核(プローブ核)の生成が必要となる。飛躍的進展を遂げるため、プローブ核の元素種、偏極量、ビーム強度の劇的な増強を目指した開発研究を行った。平成23年度は、重イオン核反応による高偏極 12N(半減期 11 ms)ビーム生成テストを行い、12Cビームと水素標的の組み合わせにおいて荷電交換反応を利用することで、高強度かつ高偏極12Nビームが得られることを発見したが、平成24年度はこの結果をもとに、偏極機構についての考察を行った。その他、さまざまな核種において、プローブ核開発およびそれらを用いた物性研究を行った。58Cu(半減期 3.2 s)を用いて、磁性体による核スピン偏極生成法の開発、およびシリコン中58CuのベータNMR測定を行い、シリコン中銅不純物の振る舞いについて新たな知見が得られた。さらには、リチウムイオン電池等のイオン伝導体材料中におけるリチウムイオン拡散の研究を目指した、リチウム同位体プローブ核8Li(半減期 0.85 s)および9Li(半減期 0.18 s)の偏極ビーム開発、シリコンのドーパント不純物として知られるリン同位体核28P(半減期 0.27 s)および29P(半減期 4.1 s)のスピン偏極生成実験を行い、偏極生成条件ならびに偏極機構についての新たな知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に行った高偏極12Nビーム生成に続いて、24年度もさまざまな実験を行った。放射線医学総合研究所の HIMAC、理化学研究所リングサイクロトロンおよび大阪大学バンデグラフ加速器施設において、核反応による 8,9Li、28,29P、58Cu の核スピン偏極生成に成功し、偏極条件の最適化および偏極機構に関する重要な知見が得られた。また、58Cuの実験では、シリコン中の銅不純物について、物質科学の観点から興味深い振る舞いを示唆する結果が得られた。一方、磁性体による58Cu核スピン偏極生成については、有意な偏極を確認するには至らなかったため、実験装置、方法に対して改良の必要性が示された。以上の成果から総合的に判断して、今後の研究の発展を大いに期待させ得ることから経過はおおむね順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により開発したプローブ核 8,9Li、12N、58Cu を用いて、ベータNMRによる物性研究を進める。限られたマシンタイムを有効に利用するためには、試料交換を短時間にすることが重要で、低温のまま試料交換ができるようにするなど、まずはベータNMR実験装置の改良を行う。また高強度ビームに耐えうる水素(または水素化合物)ターゲットの開発も必要であることが明らかになったので、これを進める。磁性体箔による58Cu偏極生成については、磁性体の表面処理法、Cuイオンの電子捕獲過程等について十分に検討しなから推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ベータNMR用試料ホルダーの改良、磁性体試料用チェンバーの改良のための材料、真空部品等、優良な単結晶試料・磁性体試料等の実験試料を購入する。その他、外部施設での実験や学会等への参加ための出張旅費、論文投稿費等に使用する。
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