本課題は、垂直キッカー電磁石とクロマティシティー変調を用いて波状のビーム(バンチの先頭から尾部にかけて、重心位置が上下する)を作り、準単色の垂直偏光コヒーレント放射を得るというものである。 本件実現の前提となるのは、ベータトロン振動のコヒーレンスの維持であるが、予想に反し、この点に関する研究が困難であり、最終的に解決に至らなかった。その原因は、クロマティシティーにあると推測している。他施設においてはコヒーレンスの維持に成功しているが、それはクロマティシティーがゼロの状態であった。研究の前提である線形モデルでは有限なクロマティシティーでもコヒーレンス減衰はゼロであるが、現実にはクロマティシティーが小さいほどコヒーレンス減衰が小さい。更にクロマティシティー変調によっても、コヒーレンス減衰が起きてしまい、十分なコヒーレンス維持ができなかった。このメカニズムについては、理論的な解明にいたらなかった。 本研究のもう一つのテーマは、研究に必要なビーム力学の要素技術、および要素理論に関するものである。こちらは不十分ながら成果を上げる事ができた。即ち(1) 放射励起によるベータトロン振動のデコヒーレンス、(2)ウェイク場によるデコヒーレンスのの閾値特定と、減衰効果をの除去、(3) 分散部へのエネルギー差を利用した入射技術、(4)クロマティシティー変調によるベータトロン振動位相シフト蓄積の実証、等である。
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