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2013 年度 実施状況報告書

新しい陽電子手法による,水の液体構造および活性種のナノ秒領域の反応に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 23600011
研究機関独立行政法人日本原子力研究開発機構

研究代表者

平出 哲也  独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (10343899)

キーワードポジトロニウム / バブル / サブナノメートル / 陽電子消滅 / 液体 / イオン液体
研究概要

高温高圧水測定用セルを製作し,昇温昇圧試験を完了した。本来計画していた装置の高エネルギーX線ビーム径が30ミリあり,試料中で電子対生成で作られた高エネルギー陽電子の拡散などを計算した結果,拡散距離が大きく,セルが非常に大きくなることが分かった。高温高圧で実験を行うため,容器は小さい必要がある。一方,最近,つくばの産総研において,ビーム径2ミリの高エネルギーX線が開発され,高温高圧セルの容積を大幅に低減でき,測定等において大きなメリットがあるため,ビーム径2ミリの高エネルギーX線用のセルを作成した。
一方,LSOシンチレータを利用した陽電子消滅寿命-運動量相関(AMOC)測定装置の開発は,前年度まで順調に進み,計数率の増大,要求される時間分解能を実現しており,国際会議でも発表を行った。現在は,震災後の実験室の整備等のため,実験が出来ない状況にあるが,再開後,水の測定に着手する。
また,液体構造の研究につなげるため,イオン液体を試料に用いて研究を行った。AMOC測定による研究から,イオン液体中では多くの現象がサブナノスケールで非常に遅いことを見出した。その特性を利用し,以下の新しい手法開発を行った。従来は消滅確率が一定であることにより,陽電子消滅平均寿命を計測し,静的なサブナノスケールの情報を得ることが行われてきた。今回,イオン液体中で,電子と陽電子の結合状態であるポジトロニウムがバブルを形成する際に,安定なバブルへと移行するまでに起こる振動を,消滅確率の振動として捕らえることに成功した。これはAMOC手法による研究から,時間分解能100~200ピコ秒で十分に捉えられる遅い現象であることが解明されたことから,実現したものであり,水などの液体への応用が可能であるかは,今後検討が必要であるが,サブナノスケールの全く新しい動的測定手法を実現したものである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本課題は本来,3年で達成する予定であったが,東日本大震災の影響で1年ほど遅れており,1年の延長をしている。遅れはおおむね1年程度であり,1年遅れで達成できる準備は整っている。現在も震災の影響で実験室の一部が使用不能であり,また,申請書では測定温度制御を,インキュベーターを借用し実施予定であったが震災で故障し,修理不能となったため,温度制御の方法に関して,現在検討中である。室温以上の測定には恒温水槽を用いて行う予定であり,大きな問題にはならないと考えている。

今後の研究の推進方策

研究課題はおおむね,予定通りに進んでおり,装置の開発も順調に進んでいる。当初,ドイツで実験を計画していたが,恒温高圧セルの設計のための計算などの結果,ドイツで行うよりも,新たにつくばに整備された2ミリという細い高エネルギーX線ビームを用いる方が,予算的にも性能的にも有利であることから,つくば産総研のビームで実験を行うためのセルを製作し,つくばで実験を実施することとした。
水の測定ではインキュベーターを借用して測定を行う予定であったが,現状では室温以上での測定のみ,恒温水槽を用いて可能であり,室温以上での測定から実施し,0℃から室温の測定は,機材が調達され次第実施することとなる。
また,AMOCを利用した研究で,水とイオン液体ではナノスケールの現象において,イオン液体中で,著しく遅い現象が見出され,現在の装置の時間分解能でも,サブナノスケールのポジトロニウムバブルの形成過程が観測できる可能性が示され,水などの他の液体構造の研究への波及を考えると,非常に影響が大きく,イオン液体を用いて,サブナノスケールの構造変化などを捉える新しい手法,陽電子消滅確率の振動部計測手法の開発も積極的にも行っていく。また,水などのほかの液体への適用の可能性についても評価を行う予定である。

次年度の研究費の使用計画

計画からおおよそ1年遅れて研究が実施されており,予定では最終年度に国際会議発表,国内会議発表,試料購入,実験旅費などが予定されていた。1年延長した次年度は,おおよそ,この最終年度の計画を実施することとなる。計画では2年目にも国際会議で発表を予定していたが,計画より1年遅れなので3年目にあたる2013年度は,他のテーマで国際会議から招待されたため,国際会議参加旅費を本研究課題から支出しなかった。そのため,計画の最終年度分よりも残額が多い。
借用し使用の予定であったインキュベーターであるが,使用不能となったため,室温以下での測定が出来ない状況となっており,計画の最終年度よりも多い分,おおよそ15万円程度は,温度制御を行うための機器整備にあてることを計画している。計画の最終年度同様に,国際会議発表,国内会議発表,実験旅費,試料購入費として使用する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Positronium bubble formation in room temperature ionic liquids2013

    • 著者名/発表者名
      T. Hirade, T. Oka
    • 雑誌名

      Journal of Physics: Conference Series

      巻: 443 ページ: 012060

    • DOI

      10.1088/1742-6596/443/1/012060

    • 査読あり
  • [学会発表] イオン液体中におけるポジトロニウムバブル形成2014

    • 著者名/発表者名
      平出哲也
    • 学会等名
      第51回アイソトープ・放射線研究発表会
    • 発表場所
      東京大学本郷キャンパス(東京)
    • 年月日
      20140707-20140709
  • [学会発表] Positronium bubble oscillation in room temperature ionic liquids2013

    • 著者名/発表者名
      T. Hirade
    • 学会等名
      2nd Japan China Joint Workshop on Positron Science
    • 発表場所
      産総研(つくば)
    • 年月日
      20131220-20131223
    • 招待講演
  • [学会発表] イオン液体中のポジトロニウムバブル形成2013

    • 著者名/発表者名
      平出哲也
    • 学会等名
      京都大学原子炉実験所専門研究会『陽電子科学とその理工学への応用』
    • 発表場所
      京都大学原子炉実験所(熊取)
    • 年月日
      20131206-20131207
  • [学会発表] Positron annihilation methods by use of LSO scintillators2013

    • 著者名/発表者名
      T. Hirade, T. Oka
    • 学会等名
      41st Polish Seminar on Positron Annihilation
    • 発表場所
      Lublin, Poland
    • 年月日
      20130909-20130913
  • [学会発表] LSO シンチレータによるAMOC 測定2013

    • 著者名/発表者名
      平出哲也,峯井俊太郎,酒井弘明
    • 学会等名
      第50回アイソトープ・放射線研究発表会
    • 発表場所
      東京大学本郷キャンパス(東京)
    • 年月日
      20130703-20130705

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公開日: 2015-05-28  

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