研究課題/領域番号 |
23600013
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
西中 一朗 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (70354884)
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キーワード | 放射線 / 加速器 / 放射性医薬品 / 核医学 |
研究概要 |
昨年度に引き続き211Rn(ラドン)/211At(アスタチン)ジェネレータ用Rn分離装置、ジェネレータ装置の製作、改良を行い、211Rnトレーサーを用いた性能試験に備えた。 震災の影響で211Rnの許認可申請が遅滞しているため、211Rnでのトレーサー実験に先駆けて、211Atでのトレーサー実験を行った。原子力機構タンデム加速器施設において原子核反応、Li(リチウム)+natPb(鉛)でAt(アスタチン)同位体を合成し、乾式蒸留法に基づくAtトレーサー分離精製法における分離条件を詳細に調べ、分離効率の再現性が良いことを確認した。Atの化学挙動を基礎科学の観点からより深く理解するため、ハロゲン同族元素のヨウ素との対照実験を開始した。I(ヨウ素)トレーサー実験の基礎基盤となる核データ取得のため、Li+natSn(スズ)反応で合成できるI同位体の励起関数をγ線スペクトロメトリーにより決定した。Li+natSn反応で合成したIトレーサーを用いて、本研究でAtトレーサー用に開発した分離精製法におけるIの分離効率を調べた。Atの分離効率はIに比べて約10倍優れていることを明らかにした。同族ハロゲン元素間での化学挙動の違いを明らかにすることで、Atジェネレータ開発、放射性医薬品の研究、放射化学的基礎研究について重要な知見を得た。 Li+natPb反応でのAtトレーサーの製造と利用について得られた研究成果を9月にイタリアのコモで開催された第8回核・放射化学国際会議(NRC-8)でポスター発表を行った。また、日本放射化学会年会(10月)および京大原子炉専門研究会(1月)で口頭発表した。幅広い観点から議論することで、新しい研究開発の意義や重要なポイントなどを再確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
震災の影響のため211Rnの放射性同位体使用許認可申請が遅滞していたため、今年度も211Rnトレーサーを用いた実験が実施できなかった。この点では当初の研究実施計画から遅延しているが、平成24年度に引き続きジェネレータ装置の製作、改良を行った。くわえて乾式蒸留法に基づくAtトレーサー分離精製法における分離条件を詳細に調べた。これにより3年間の研究期間で研究目的を達成するという観点からはおおむね順調に進展していると判断する。平成25年2月に211Rnの許可申請が認められ、211Rnトレーサーを用いた性能試験も可能となり、研究目的が達成できる見込みである。 Atトレーサーの製造、化学挙動に関する実験研究では、引き続き、乾式蒸留法に基づくAtトレーサー分離精製法の開発を行い、分離効率の再現性が良いことを確認した。211Rn/211Atジェネレータ開発で必要となる無担体Atトレーサーの乾式蒸留、溶出挙動などの化学挙動についての重要な知見を得た。 当初の計画には無かったが、ハロゲン同族元素のヨウ素との対照実験を開始した。Atの化学挙動を基礎科学の観点から調べることは、Atの化学挙動を基礎科学の観点からより深く理解することにつながり、211Rn/211Atジェネレータ開発、放射性医薬品の研究、放射化学的基礎研究に対して重要な知見を与える。 昨年度に引き続き、日本原子力研究開発機構の量子ビーム応用研究部門RI医療応用研究GrにAtトレーサーを提供し、このAtトレーサーを用いて、多くのがん細胞に発現が確認されている膜タンパク質「Her2」に親和性のあるペプチドへの標識を行った。Atトレーサーを用いた放射性医薬品研究での研究結果をフィードバックし、本ジェネレータ開発に活かす協力研究体制が整った。この協力研究体制は当初の研究計画にはなかったが、本研究の目的達成に向けて、その有効性を高く評価する。
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今後の研究の推進方策 |
211Rnの使用許認可が得られたので211Rnトレーサーを用いた性能試験を開始する。性能試験結果を検討し、装置の高度化を目指した改良を行い、211Rn/211Atジェネレータの実用化、使用許可の獲得を目指した基礎基盤技術を開発する。具体的には、希ガス放射性同位体211Rnの化学的特性を利用し、温度制御による金属表面等への吸着、脱着によって化学分離する際の、211Rnの放射化学的純度及び化学収率を調べることで、最適な化学分離条件を検討する。211Rn/211Atジェネレータ用Rn分離装置、ジェネレータ装置の開発においては性能試験結果に基づいてこれら装置の特許出願を目指す。 引き続きAtとIトレーサーを用い、共同研究に基づく放射性医薬品研究と無担体アスタチン、ヨウ素の化学挙動についての基礎研究を推進する。放射性医薬品研究における標識化合物合成の高効率化を目指し、無担体アスタチン、ヨウ素の乾式蒸留、溶出特性などの化学挙動を明らかにする。無担体アスタチンの化学挙動は、同族ハロゲン元素の臭素、ヨウ素に比べて複雑であり、未解決な研究課題が多い。無担体アスタチンの化学挙動を基礎科学的観点から調べることで、211Rn/211Atジェネレータの基礎基盤技術の確立を目指す。 加速器実験は、連携研究者、協力研究者らと協力して実施し、トレーサー実験、装置の性能試験、性能評価を効率的に進める。 学会や研究会での研究発表を通して、核化学、核医学分野の研究者と議論することで研究の意義や重要なポイントを確認し、研究の推進方策について検討を行い、効率的、効果的に研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、主として加速器実験とトレーサー実験で使用するヘリウムガス、化学薬品、実験器具等の消耗品の購入に使用する。装置の高度化を目指した改良のためのガス配管部品、バルブ等を消耗品費で購入する。 また、得られた研究成果を発表する日本放射化学会年会や研究会、および共同研究者との報告会に参加するための旅費として研究費を使用する。
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