研究概要 |
希ガス放射性同位体211Rnの化学的特性を利用した分離法に基づく211Rn(ラドン)/211At(アスタチン)ジェネレータ用Rn分離装置、ジェネレータ装置を製作し、装置の気密性やヘリウムガス循環等の性能試験を行った後、211Rnトレーサーを用いた性能試験を行った。具体的には、原子力機構タンデム加速器から供給される60 MeVの7Liビームを金属ビスマス標的に照射し、核反応7Li(209Bi,5n)211Rnによって211Rnを合成した。金属ビスマス標的内に捕捉された211Rnをジェネレータ用化学分離装置内の電気炉において550度に加熱し、融解した金属ビスマスから希ガス放射性同位元素211Rnを気化させ、ヘリウムガスによって液体窒素で冷却したトラップへ導き、トラップのステンレス管内壁に吸着させることで化学分離した。化学分離1日後、ジェネレータ装置によって、211Rnの放射崩壊で生成した娘核種211Atをエタノールで高い回収率、放射性純度で回収し、トレーサー溶液を精製した。 本研究で開発したジェネレータ用Rn化学分離装置、ジェネレータ装置が、研究当初の想定通り、安全かつ有効に機能することを確認した。これら装置の機能に基づいた211Rn/211Atジェネレーターが実用化可能であることを実証した。 震災の影響で211Rnの許可申請が遅延したため、211Rnトレーサーを用いた性能試験は、当初の計画通り十分には実施できていない。引き続き、製作したジェネレータ装置の性能試験を行い、実用化に必要な基礎データを取得する。 211Rnトレーサー実験に先駆けて、211Atトレーサーでの予備実験を行い、ジェネレータ開発に必要な無担体アスタチンの化学挙動や標識化合物合成に関する研究を実施した。その研究成果を国際学会等で報告した。これらの研究も継続し、展開していく予定である。
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