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2013 年度 実施状況報告書

新規微小結晶マウント法とキセノン加圧誘導体調製法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23600016
研究機関公益財団法人高輝度光科学研究センター

研究代表者

熊坂 崇  公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 副主席研究員 (30291066)

キーワード試料処理 / 機器分析 / 結晶解析 / タンパク質
研究概要

まず、当初案で本年度に実施予定の「(6) 希ガス誘導体結晶による位相決定法の開発と評価」では、本法が従来法に比べて優位な点を明らかにすることができた。従来は希ガス加圧後、大気圧に戻してから試料凍結を行っていたが、本法では加圧状態のまま凍結できる。卵白リゾチーム正方晶を用いて、加圧時凍結および減圧後凍結の試料で、希ガスがどのような蛋白質の領域に結合するかを調べた。加圧時凍結の結果、従来見出されていた結合部位2箇所に加え、新たに2箇所の結合を確認した。従来キセノンは溶媒から隔離されたポケットに結合するとされていたが、新たな結合部位はいずれも分子表面に位置していた。加圧時凍結により、これまで結合が見られなかった試料についても誘導体を作成できる可能性が広がった。
このほか、昨年度および一昨年度に実施した項目についても、さらに高度化を進めた。
「(1) ガラス細管への試料の封入方法の検討」については、精密デジタルピペットコントローラを本年度に導入して、現有の空圧インジェクターとの操作性の比較を行った。吸引量を厳密に制御できる本装置を利用することで、手動操作に比べて微小結晶の操作性が向上し、封入方法として複数の手段が使えるようにした。
「(2)ガラス細管のデザイン」については、テーパー型細管の作成方法を確立し、その製造を上記のコントローラの製造者に委託することができた。しかし、一般利用者が直接調達可能な状況にはなっていないため、現在、細管を含む試料ピンの製作について他の結晶マウントツール製造者との協議を開始している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

今年度までに予定された実施計画をおおむね順調に達成している。
まず、「(1) ガラス細管への試料の封入方法の検討」については、毛細管現象を利用した吸引に加え、空圧マイクロインジェクターおよび電動ピペッターを導入したことで操作性が格段に向上したため、広く利用者に普及させることができそうであり、実際に放射光施設SPring-8において利用提供を開始している。次に、「(2)ガラス細管のデザイン」についても、本法に適したデザインを策定し、外部への製造委託も達成した。「(3) ガス加圧法の開発」と「(4) ガス加圧法の実証実験と改良」、「(6) 希ガス誘導体結晶による位相決定法の開発と評価」は互いに関連する内容であるが、自動サンプル交換ロボット(SPACE)用試料ピンに取り付けたキャピラリを用いることで、上述のように有効な重原子誘導体作成方法として確立することができた。ただし、ヘモグロビンなどのガス吸着タンパク質への試みは行えておらず、現在、着手している。また、「(5) サンプル自動マウントロボットでの利用検討」についても、利用の実証ができた。
成果発表については、(1-2)および(4-6)の結果についてまとめた報文は出版されている。

今後の研究の推進方策

以下の項目について延長期間内にさらに研究を実施する計画である。
(2) ガラス細管のデザイン:加圧実験の安全性と耐圧性能を高めるためガラス細管への樹脂コーティングを試みる。すでに試作準備を開始している。
(4) ガス加圧法の実証実験と改良:実証実験としてヘモグロビンなどガス吸着タンパク質の結晶解析に適用して、有効性を確認する。現時点で試料および混合ガス調整装置、簡易型グローブボックスは調達済みである。
(7) 低温で晶析した試料の操作・保持:ガラス細管内結晶化は脆い試料を安定に保持するのに有効な方法である。サンプルマウントと結晶化を両立させることを目的とし、とくに操作が難しい低温で析出する結晶の操作に注目して、試料劣化を最小限にした試料操作方法の開発を試みる。

次年度の研究費の使用計画

研究が順調に推移し、技術移転を含め企業の協力を取り付けることができた結果、計画していた予算に残が生じた。一方、開発した試料マウント法の利用において、低温で得られた結晶試料を保管する環境の整備と、低温時の操作を効率化する必要が生じたため、これに対応する機器の導入が必要となった。機種の選定を進めていたところ、2014年度に新発売される装置が目的に適していることが判明した。
上述の通り、結晶試料および試料マウントツールを低温で保管、あるいは操作するための小型環境試験器(100万円弱)の導入を行う。-20ないし+150℃の温度範囲を制御できる装置であり、かつ試料観察用窓や多機能な温度プログラムが実行可能であるなど、研究目的に最適な装置である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] A convenient tool for gas derivatization using fine-needle capillary mounting for protein crystals.2013

    • 著者名/発表者名
      Mizuno, N., Makino, M., Kumasaka, T.
    • 雑誌名

      J. Sync. Rad.

      巻: 20 ページ: 999-1002

    • DOI

      10.1107/S0909049513021584

    • 査読あり
  • [学会発表] Advanced Crystal Mounting Tool for Gas Pressurization Improves Efficiency of Xenon-Derivatization

    • 著者名/発表者名
      Nobuhiro Mizuno, Masatomo Makino, Takashi Kumasaka
    • 学会等名
      The 12th Conference of the Asia Crystallographic Association
    • 発表場所
      HKUST, Hong Kong
  • [図書] Fine-needleキャピラリーを用いたマウント法(「タンパク質結晶の最前線」所収)2013

    • 著者名/発表者名
      水野伸宏, 熊坂崇
    • 総ページ数
      9
    • 出版者
      シーエムシー出版

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公開日: 2015-05-28  

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