微小試料の角度分解光電子分光法(ARPES)を実現するための装置開発を、前年度に引き続き推進した。 まず、試料冷凍機の除振器の開発を進めた。前年度において、除振の方式として、冷凍機のモーター部に磁気バネ式除振器を取り付ける方法と、冷凍機と試料との間の熱伝導部にHeガス冷媒部を設けるHeダンパー方式の検討を行い、後者を採用して製作を行った。今年度は、製作した除震器の冷却試験を行った。冷却の目標温度は数十K程度であったが、残念ながら目標とする温度には到達することはできなかった。これは、冷凍機本体と冷凍機の真空槽との隙間が非常に狭いために熱流出を起こしているのが原因と考えられる。今後は、冷凍機の真空槽も含めた開発を検討する必要がある。 また今年度において、ARPESに用いる角度調整機構付き試料台の開発を行った。試料台は、大気中で試料をマウントし、真空槽内の冷凍機ホルダーに搬送するための台である。フロー型冷凍器の場合、冷凍機本体に組み込まれたゴニオステージが製品化されているが、我々が用いる循環型冷凍機の場合、ゴニオステージは一般的ではない。そこで、試料の面内角度の調整が可能な回転ステージを組み込んだ試料台を製作した。回転ステージの角度は、真空槽の外からウォブルスティックを用いて調整することができる。本研究では、真空槽内において光電子回折によって試料の方位を確認するための二次元光電子分析器も開発しているが、この分析器で観測した方位をもとに、角度調整機構付き試料台によって試料の方位出しを行うことができるようになる。
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