研究概要 |
散乱面(今回は鉛直面)内におけるX線ビームの高い平行性と小さなビームサイズ(とくに水平面内ではマイクロメータサイズに集光)とを実現した光学系を用い、金単結晶基板からのX線定在波を観測した結果を昨年報告した。サファイア基板(0 0 0 1)上に育成されたNiOの薄膜(膜厚1 nm)とナノワイヤー(平均膜厚約1モノレーヤに相当)の測定について報告する。サファイアは金に比べて軽元素から構成されているので、回折角度幅は狭くなる。そのため、入射X線の鉛直面内の角度発散を金単結晶を調べた場合よりも小さくし、かつ、測定中に入射ビーム強度をより安定にする必要が生じた。そこで、試料上流にチャンネルカットを2組並べ、のフィードバックシステムを用い入射ビーム強度を安定化させた光学系を用いた。 X線光子エネルギー12.4 keVを用い、1 0 -1 4、2 -1 -1 3、0 0 0 6、2 1 -3 3、2 -1 -1 3, 1 1 -2 3、1 -1 0 2、0 1 -1 2 のそれぞれのブラッグ角の周りで、試料をロッキングさせ、Niの蛍光強度曲線と回折ロッキング曲線を記録した。蛍光強度をオフブラッグ角度におけるその強度で規格化し、また、回折強度はダイレクトビーム強度で規格化した。回折強度の反射率は数10%、とくに、1 0 -1 4や2 -1 -1 3などでは約90%と高い反射率を得た。すなわち、サファイア単結晶がSiと同程度の結晶完全性を見かけ上有することを示している。 Ni原子が規則位置を占有していない場合、蛍光強度曲線は回折ロッキング曲線と一致すると予想される。得られた蛍光曲線はロッキング曲線とはピーク位置、形状、高さが一致しないため、Ni原子はそれぞれの網平面位置に対して規則的な位置を占有していることが示唆された。サファイア/NiOの界面構造を原子スケールで解析中である。
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