研究課題/領域番号 |
23601001
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
佐藤 慎也 山形大学, 教育文化学部, 教授 (20260424)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 外遊び / 子育て支援 / 冒険遊び場 / 保護者 / ネットワーク / 東日本大震災 / 子育て支援施策 / マネージメント |
研究概要 |
平成23年度においては遊び場の保護者の利用状況ならびに保護者の役割についての事例調査を実施した。2011年3月11日に発生した東日本大震災では、地震や津波によって多くの居住地が被災し、放射能災害では多くの住民が避難生活を余儀なくされた。そうした状況で海岸公園冒険広場を仙台市の指定管理者として運営していたNPO冒険あそび場せんだい・みやぎネットワークでは被災した海岸公園冒険広場の運営が困難になった中で、5月初旬より避難所となった六郷小学校の校庭を利用し、冒険遊び場活動を再開した。その後、夏休みの時期までに4つの移動式の冒険遊び場活動を実施し、現在に至っている。この一連の活動では子育て世代の関わりだけではなく、仮設住宅における居住者を結ぶ新たな関係性が生まれてきている。仙台市中心部で震災後、活動を再開した西公園プレーパークの会では、保護者を中心にして震災前に発足したプレーパークを支える会が再開に大きく寄与してきた。地震災害等で不安になっている子育て世代に話を聴きあい、活動をともにする子どもたちにも保護者にとっても癒しの空間を提供できている点も大きな成果となっている。またメンバーとのネットワークから石巻市飯野川地区の亀ガ森公園内に月に一度遊ぼう会を実施し、避難所生活が続いた子どもたちの憩いの場を提供してきた。この活動を通して地域の中での信頼関係を新たに築き始めている。熊本市での調査では、熊本市が冒険遊び場開催に対して助成制度を創り出すことで、PTA、保育連盟、NPO、ボーイスカウトといった多様な団体が冒険遊び場活動を通して地域のコミュニティ形成に活用するケースが見られた。今後、地域に根ざしながら保護者の主体的な関わりをどのような形で広げていくかが、課題となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では冒険遊び場における保護者によって成立した子育てグループならびに地方自治体における子育て支援施策に着目し、新たな地域の子育て支援環境のネットワークの構築に向けた課題と方策を明らかにすることを目的としている。平成23年度の課題としては冒険遊び場における保護者を伴った利用状況と保護者の役割を明らかにすることに取り組んだ。震災後、未就学児童がいる保護者の間で避難生活、放射能災害などで不安感は増大しており、当初想定した研究目的より外遊びに関しては保護者の関心が高まっている。それとともに地域を越えた親子の移動なども多く見られ、居場所としての外遊び空間の整備が大きな課題となってきている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は第一段階としての保護者の利用状況の把握と役割の調査のまとめ、第二段階として冒険遊び場のマネージメント方法の調査の実施、第三段階の研修プログラムの開発および子育て支援ネットワーク構築プロセスについての検討ならびに調査を開始する。冒険遊び場を対象として子どもたちの育成、地域住民との協働・住民の参画、安全・安心なまちづくりへの取り組みなど、地域の行政課題との整合性も含めた幅広い横断的な視点から冒険遊び場を地域の中でどのような方法で運営しているかを現地調査およびe-mailおよび電話等の通信手段を用いる補足調査を通して明らかにする。冒険遊び場が複数存在する自治体では、地域政策として位置づけられているものも見られるため、そうした冒険遊び場は関連づけて扱う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の調査では、調査旅費として東日本大震災で被災した仙台、石巻地区を中心に保護者による子育て支援ネットワークの構築状況を調査するとともに北海道、関東地方、中国地方等での地方自治体と地域住民との関わりで生まれてきている冒険遊び場の状況についても把握する。事後の資料整理として学生の人件費等が必要となる。学会での発表経費が必要となる。また冒険遊び場に関わるプロジェクトリーダーからの調査分析に向けての会議も必要となる。
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