本年度の研究では、冒険遊び場による子ども環境のネットワーク化について東日本大震災後の被災地における冒険遊び場活動の広がりも含めて取組んだ。 岩手県大槌町では日本ユニセフ協会、日本冒険遊び場づくり協会、建設会社、地方大学と地元との恊働による実験的な試みとして里山まるごとプレーパークを実施している。この取組みでは、プレーリーダーとして隣接市の自然学校にも協力を依頼し、地元では復興支援団体から遊び場所の提供、地元工房、障害者施設から、遊び道具の提供、旧正月行事の協同企画を行ってきている。また他地域で先行的に遊び場活動を実施している支援団体とは、復興事業の進行に伴い、区画整理地内の遊び場の移転が必要とされており、受け皿としての役割も検討されている。 仙台近郊では仮設住宅から復興住宅への移行期に入り、仮設住宅地での遊び場活動も変化の時期を迎えている。岩沼市の里の杜遊び場では、冒険あそび場せんだい・みやぎネットワークが岩沼市・サポートセンター・社会福祉協議会と連携してスタートした。地元でのボランティア育成も行う中で、復興住宅移行後は地元団体が中心になって復興住宅地の新たな遊び環境の運営を行う予定である。 仙台市の荒井東地区災害公営住宅では、町内会が組織され、集会所の運営も開始された。集会所ならびに広場を活用した遊び場活動は、同時に集会所内で茶話会を開催することで、子どもの遊び環境を居住者との関わりとして捉え直す形で進められている。この活動は災害公営住宅内に留まらず、周辺町内会にも拡充されており、復興地におけるコミュニティ再生の試みとして捉えることができる。 以上のように東日本大震災被災地域において冒険遊び場の子ども環境のネットワーク化は災害によって分断されてしまった子ども環境の再生を通して地域復興が諮られていくことの必要性を示している。
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