研究課題/領域番号 |
23601004
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
石川 真 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (60318813)
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キーワード | つながり / SNS / 関わり方 |
研究概要 |
現代の青少年(子ども)は,リアルな社会とネットワーク上の社会という二つの並行した社会の中で成長・発達している。このような現状を踏まえ,本研究はネットワーク上におけるリアルな社会において,電子メール,チャット,電子掲示板,ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などを介したテキスト(文字)による他者との相互作用過程に着目する。そして,青少年が他者とどのようにつながり,関わっていくか,その特徴を探ることを目的としている。本年度は,1.質問紙調査において,主としてSNSでの他者との関わり方の傾向について探った。また,2.学習活動として実験的に掲示板を使用し,参加する学習者の他者との関わりや学習との関係性について探った。 1の調査では, SNSコミュニティに対し,自らがコミュニケーションの発信者となるネットコミュニティと,閲覧のみという傍観者として参加しているネットコミュニティという関与の違いに着目して分析した。その結果,自らがコミュニケーションの発信者として他者と関わる方が,他者との共感性や親密性が高く,肯定的な評価をしていることが明らかとなった。また,社会的スキルが高い者の方が低い者よりも,他者との関わりが良好な傾向を示した。こうした結果を踏まえ,ネットコミュニティにおける他者との関わり方の傾向を探るためには,自ら発言するか否かの差異や,社会的スキルの違いに注目すべきと考えられる。 2の実験においては,親しい学習者同士とそれほど親しくない学習者同士での掲示板を用いた意見交換の結果を比較検討した。その結果,親しくない学習者同士が親しい学習者同士よりも,より協力し合う関わり方をしていることが明らかとなった。一方,掲示板を活用して交流を深めるためには,書き込みの制約の少なさや書き込む時間のゆとりが重要な要素であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの調査,実験実施を通して,ネットワーク上における他者との関わり方,つながりについての傾向を探ることができた。毎年度,調査で得られた結果の一部については,社会心理学会等でポスター発表し,さまざまな情報交換,知見を得ることで,研究を進めている。また,毎年度大学紀要においても成果を報告している。こうしたことを踏まえ,当初の計画に沿って実験,調査を実施している状況である。質問紙の作成,検討においては,ネットを取り巻く環境の急激な進展に伴い,時代に適した内容と,より汎用性の高い内容の双方を考慮しながら,高い信頼性・妥当性をめざしているところである。実験のデザインは,授業におけるSNS環境を設定した。実験的な掲示板への書き込みを中心とした学習活動を通して,他の学習者との関わり方に着目することにより,ある程度統制のとれた環境下におけるネット上の他者とのつながりの傾向を探ることができた。したがって,実験を実施することにより,質問紙では得られない情報を得ることができたといえる。 以上の点を踏まえ,現在までの達成度はおおむね順調に進展している状況にあると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたり,これまでの成果を縦断的に検証すると共に,これまで明らかにできなかった点についてさらに調査・実験を進める。研究関連の情報収集については,継続して取り組む必要がある。国内の諸学会へ参加することにより,関連する研究成果などの情報収集,研究者との交流を含める。とりわけ,ポスターセッション等で個別に質疑応答のできるような場面において,有用な情報を収集する。 最終年度においては,新規に,研究分担者(1名)の協力を受けることとなった。長年,心理学領域において調査研究を専門として取り組んでいることから,調査の実施にあたっては,専門的な助言を受けながら,信頼性・妥当性の高い質問紙を採用し,取り組んで行く。また,前年度に引き続き,紙媒体のみならず,Webによる調査も実施していく。 実験の方策においては,前年度の成果を踏まえつつ,ソーシャルラーニングの場面を設定し,他者との関わり方の変容を,質的・量的に分析検証する。とりわけ,他者との関わり方という側面に焦点を当てるため,学習者同士の関係性などをあらかじめ調査した上で,実験的に親しさの度合いによりグループ分けするなど,有効な条件設定を検討した上で進めていく。 質問紙調査,実験等の結果を検証する上で,必要に応じて,質的なデータ収集も試みる。自由記述による調査を採用し,これまで質問紙調査で重要な視点として挙げられた,時系列の変容に着目した内容についてその傾向を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
人件費・謝金においては,調査を実施するにあたり,一部Web形式を採用したことにより,データ入力の人件費を抑制することが可能となったことが理由である。また,実験においては,被験者を募るのではなく,授業の中で実施したことにより,この人件費・謝金分も減少した要因である。 旅費については,連携研究者の支払いをしなかったこと,校務との関係で,学会等に積極的に参加できなかったため,使用額が減少した。 さらに,前年度からの繰り越しがあったことなどが主たる理由である。 次年度は,研究分担者として1名参加していただき,次年度使用額に近い予算を分担者に割り振る。代表者としては,当初計画していた予算通りで,本研究は実施可能であり,なおかつ,さらに,研究分担者の支援を受けることが可能となり,研究計画以上の調査の実施等を行う予定である。
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