研究課題/領域番号 |
23601006
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
古田 真司 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (90211531)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 学校保健 / 不定愁訴 / レジリエンス / セルフエスティーム / ストレス感受性 / ストレスコーピング / 感動体験 / 自律神経 |
研究概要 |
本研究は、様々な社会的背景により、児童・生徒に急増している心身愁訴、特に「体がだるい、疲れやすい、頭が痛い、お腹が痛い」などのいわゆる「不定愁訴」に対して、教育保健の立場からその実態を明らかにし、さらに継続的かつ積極的介入によって、その改善策を提案しようとするものである。 本年度はまず、不定愁訴の背景となる、児童・生徒のこころの健康に関する各種の調査研究を行い、その結果のいくつかを論文としてまとめた。児童・生徒の「生きる力」に通じる心理要素として最近注目されているレジリエンス(困難な状態からうまく抜け出し対応できる能力)に注目し、レジリエンスとストレス低減するコーピング行動に関する基礎的研究(大学生を対象)を行った。さらに、中学生、小学生のレジリエンスやストレス経験、ストレス感受性との関連、あるいは、学校や家庭における体験の有無とセルフエスティーム(自己肯定感)の関係を検討した調査研究などから、児童・生徒の不定愁訴につながるいくつかの心理的背景要因を分析した。 その結果、本年度は「大学生のレジリエンスとストレス反応及び不定愁訴の関連 -客観的ストレスの違いによるレジリエンスの効果の比較-」「中学生における感動体験と自己肯定感の関連についての検討 -学校適応と家族機能の影響に着目して-」「小学生のストレスへの感受性とレジリエンスがセルフエスティームに及ぼす影響」「小学生におけるストレス経験とポジティブなコーピングの関連」の4つの論文をまとめて、学会誌等でその研究内容を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、まず、不定愁訴を持つ児童・生徒の心理・社会的背景を、いくつかの調査によって明らかにし(心理・社会学的アプローチ)、同時に、児童・生徒の自律神経機能を継続的に調査・測定してくことで、学校現場での児童・生徒の実態を明らかにする(医学・生理学的アプローチ)。その後、これらの成果を生かして、児童・生徒が自分たちの健康を見つめなおすことができる教材を作成して指導する等、不定愁訴が蔓延する学校現場へ積極的に介入し、有効な改善策を提案すること(教育保健学的アプローチ)を最終的な目的として計画している。 本年度は、心理・社会的アプローチを主として研究を行い、科研費補助以前から継続して進めてきた研究を含めて4つの研究をまとめた。そこでは、ストレス経験やストレス感受性とレジリエンスの関連や、学校内外での体験が中学生の自己肯定感などのに及ぼす影響の検討を行った。不定愁訴の背景となるストレスの実態や、それに耐えうる力の1つであるレジリエンスを検討することで、今後、最終的な研究として示す予定の教育保健学的アプローチの具体的方法に繋げたい。以上から、本年度の達成度は、概ね計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、次年度以降の準備のため、科学研究費補助金により、データ分析のためのソフトウエアや自律神経機能を測定する加速度脈波分析装置およびそのソフトウエア等を購入している。これらは、次年度の第2のアプローチである「医学・生理学的アプローチ」に生かせるように、現在、研究計画を調整している。さらに、代表的な児童・生徒の不定愁訴の1つである腹痛や下痢の大きな要因である「過敏性腸症候群」について、その傾向がある学生とそれ以外の学生の自律神経機能等を比較することで、不定愁訴と自律神経の関係をより明らかにする研究を開始している。また今後、学校の保健室来室者に対する自律神経機能の継続的な観察により、不定愁訴の自己コントロールに繋げうる知見を得るよう、研究を計画中である。 4年計画の2年目であり、当初の計画通り、第2のアプローチである医学・生理学アプローチを中心に研究をすすめ、第1のアプローチである心理・社会的アプローチはさらに継続して、いくつかの研究をあわせた総括的な検討に進みたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、次年度以降の準備のための備品やソフトウエアを先行して取得したため、物品費の比率が予定よりやや高くなったが、他の経費を調整したため、次年度への繰越額はない。今年度は、分析の効率をあげるための消耗品等の物件費をさらに予定しているほかに、データ入力や分析のための人件費や、情報提供者に対する謝金、連絡交流のための旅費、成果報告のための費用などに研究費をあてる予定である。さらに学外での調査を増やす予定があり、そのための費用も計上する。
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