本研究は、様々な社会的背景により、児童・生徒に急増している心身愁訴(いわゆる不定愁訴)に対して、教育保健の立場からその実態を明らかにし、さらに継続的かつ積極的介入によって、その改善策を提案しようとするものである。 本年度は最終年度であり、不定愁訴を訴える児童・生徒のへの医学・生理学的アプローチから、教育的介入の可能性についての検討を行った。まず、自律神経機能を測定する機器(パルスアナライザーTAS9VIEW)を用いた、高校生を対象とした縦断的調査を実施した。希望する高校生に週1回程度の保健室への来室を促し、生活習慣と「自覚症しらべ」およびパルスアナライザーの測定を約2ヶ月間行って調査した。その結果、測定値の一つであるPSIからは、自覚症状の有無や増減を、MSIからは、Ⅲ群不快感、Ⅳ群だるさ感、Ⅴ群ぼやけ感の自覚症状の有無や増減、または人間関係や勉強への不安やストレスの有無を把握することができるという結果を得た。 この知見に基づき、保健室に来室した中学生を対象に、問診と「自覚症しらべ」、一週間の健康状態に関するアンケートの記入、パルスアナライザー(TAS9VIEW)による自律神経バランスの測定を行った。本研究では自律神経の状態に注目し、不定愁訴が交感神経優位型なのか副交感神経優位型なのかを見極め、適切な保健指導を行うことで主訴の改善を図る介入実験を行った。その結果、TAS9VIEWや問診から「交感神経型」と「副交感神経型」の不定愁訴に分類し、保健指導の内容を変えて、たとえば交感神経型の生徒には、漸進性筋弛緩法とリラックスを促す生活習慣の改善指導を、副交感神経優位型の生徒には、冷水による洗顔と基本的生活習慣(朝食を毎朝食べる、早寝早起き)の指導を行った。機器の数値を利用した保健指導によって、ほとんどの生徒が自分の状態を理解して改善に取り組み、不定愁訴の改善傾向が示された。
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