研究課題/領域番号 |
23601007
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
高木 真人 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (10314303)
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研究分担者 |
阪田 弘一 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (30252597)
永田 恵子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10588693)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | こども / 外遊び / 縁側 / 滞留 / 歩行 |
研究概要 |
「保育園における縁側の実態」を明らかにするために、京都市およびその周辺の保育園計286園に対してアンケートを送付した。その結果、回収できた計62園(回収率21.6%)のデータをもとに京都の保育園における縁側の概要を明らかにした。保育園における縁側の存在は約8割と高く、縁側の幅は1000~2000mmを中心に3000mmを越すものまで多様に分布していた。また、縁側と室内の出入りが頻繁であるのにくらべ、縁側と外(園庭)の出入りはやや少ないため、室内から縁側を介して外(園庭)へ出るという流れが発生し得る縁側は約半数となる。縁側の使い方・遊び方をみると、足りないスペースを補うような利用方法、より積極的に外部と触れようとする利用方法、汚れやすい行為を行うなど様々な利用方法が確認され、遊びに関しても静的遊び、自然遊びのほか、動的遊びも確認されたが、各園によりその発生頻度に差がみられる。 そして、このアンケート調査において縁側を介しての室内と外(園庭)の自由な出入りがあると予想された計6園の保育園について、園長先生(または主任)へのヒアリング調査を行い、また縁側の実測調査を行った。そして、特に縁側を介しての室内と外(園庭)の自由な出入りを許容していると判断される保育園のなかから、幅や面積の違いを比較することも踏まえながら計3園を選定し、さらに特徴的な縁側をもつ広島県の保育園1園を加えた計4園において、ビデオカメラを用いての観察調査を行った。幅が広く(約2m以上)、通行の支障にならず、室内と広くつなげられている縁側では、内遊びを中心に行っている場合に縁側での滞留が多く確認できた。そして、内遊びで多くの滞留が確認できた縁側では、外遊びを中心に行っている場合にも滞留が多くなる傾向も確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
京都市および京都市周辺の保育園における縁側の実態については、保育園において縁側が多用されていること、縁側の形態が多用であることなどが明らかになり、その概要を把握することができた。そして、この縁側の実態調査を受けて、観察調査を行う上で効果的な調査対象を選定することができた。 また、縁側における滞留特性については、内遊び中心に行っている場合には、使われやすい縁側の形態的特性・空間特性を把握することができた。そして、外遊び中心に行っている場合には、縁側の使われ方の頻度に差がみられたほか、その使われ方の内容にも内遊びとは異なる特徴がみられることを明らかにできた。 以上の結果について、2編の論文を日本建築学会大会学術講演会(2012年9月)において発表する予定(投稿済)であり、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらに数カ所の保育園においてビデオカメラによる観察調査を行い、滞留特性に加え、こどもたちの動き、すなわち歩行特性について分析していく。室内と広くつながり、また幅も広い縁側を有して、かつこどもたちの自由な動きを期待できる保育園を対象として選定することにより、内遊び時も外遊び時も多くの滞留がみられる保育園におけるこどもたちの動きを分析することが可能になっていくと考える。そして、これらの分析から外遊び展開のメカニズムを解明していく予定である。さらに、アジア諸国における伝統的な空間としての縁側に類する空間についても調査を行い、縁側との相違点などについて比較考察する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
京都市および京都市周辺における縁側の実態および縁側の形態的特性と滞留特性を分析した結果について、学会で発表する。そのための旅費や論文投稿費・参加費などが必要となる。 また、歩行特性の分析を行う上では、前年度までの分析結果をある程度考慮したうえで本年度に新たに調査対象を追加するのが効果的であると考えた。そのため、調査対象の選定を一部本年度に繰越したために、前年度の調査にかかる予定の費用の一部にも繰越金額を生じた。したがって、これら繰越金額は、観察調査の対象となる保育園を視察するための旅費等として使用する予定である。 そして、前年度に引き続き、歩行特性の分析を行うための保育園を対象としての、ビデオカメラを用いての観察調査を行う。したがって、そのための旅費や調査機器一式および調査補助・分析補助の大学生に対しての謝金などが必要になる。さらに、アジア諸国における伝統的空間としての縁側に類する空間の調査に関しての旅費・謝金・資料代などが必要になる。また、以上の分析に際しては、プリンタ・トナーやソフトなども必要になってくる。
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