研究課題/領域番号 |
23601007
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
高木 真人 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (10314303)
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研究分担者 |
阪田 弘一 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (30252597)
永田 恵子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10588693)
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キーワード | こども / 縁側 / 外遊び / 滞留 / 歩行 |
研究概要 |
2011度は、縁側を介しての室内と外(園庭)の自由な出入りを許容している計4つの保育園においてビデオカメラを用いての観察調査を行った。その結果、縁側の幅が広く(約2m以上)、室内と広くつなげられている2つの保育園(DT保育園、KS保育園)においては、内遊び時でも外遊び時でも縁側での滞留が多く確認された。 2012度は、これら縁側での滞留が多く確認できた2園において、内遊び時におけるこどもたちの行動特性について、さらに詳しい分析を進めた。具体的には、室内と縁側の滞在時間比率、縁側を介しての室内や園庭(外)との出入り量、および歩行動線を分析することにより、縁側におけるこどもたちの行動特性を明らかにした。その結果、縁側を中心に遊ぶ(=縁側で滞留する)こどもほど室内と縁側の出入り回数が多くなる傾向が確認された。また、KS保育園ではこども人数にくらべ、保育室面積・縁側面積が大きく、保育室間の回遊性もあるため、縁側に沿う歩行が多く確認され、園庭(外)にまで溢れ出すような事例が多く確認できた。 また、これらの保育園と同様な縁側を有し、よりいっそう自由な保育を行っている千葉の2保育園(WK保育園、SK保育園)を、新たに調査対象として加えた。これらの保育園で、ヒアリング調査および実測調査を行った上で、さらにビデオカメラを用いての観察調査を行った。これらの保育園では、こどもたちへの強制がほとんどなく、したがってこどもたちのより自発的な行動を確認することが期待でき、現在その分析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの分析の結果から、縁側から外遊びへと展開していくために必要な条件について、おおよその方向性を明らかにできつつある。 まず、縁側を少なくとも2メートル以上と広くして、保育室と縁側は広くつなげることにより、保育室と縁側の自由な出入りがしやすくなり、結果として縁側の滞留が多くなるといえる。この滞留の多さが縁側から室内だけなく園庭への出入りにもつながっていくであろう。さらに保育室間をつなぐ経路があったり、あるいは縁側自体が循環するような構成になっているなど、回遊性のある空間構成とすれば、活発な歩行を発生させ、やはり縁側から園庭(外)への溢れ出しへとつながっていくであろう。以上のように、特に内遊び時におけるこどもたちの行動特性の分析結果に関して、日本建築学会大会学術講演会(2013年8月30日~9月1日)において発表する予定(投稿済)である。 そして、こどもたちがより自由に自発的に行動している保育園2園(SK保育園、WK保育園)を調査した結果について、今後あわせて分析することにより今までの分析結果の精度が上がっていくものと考えられる。 以上より、研究の達成度としては、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度は、まず2012年度に調査した、こどもたちがより自由に自発的に行動している保育園2園(SK保育園、WK保育園)における行動特性(室内と縁側の滞在時間比率、室内と縁側の出入り量および歩行動線)の分析を進める。そして、これまでの滞留特性の分析、およびDT保育園、KS保育園における行動特性の分析とあわせて、外遊び展開のメカニズムについて総括していく予定である。さらに、アジア諸国における伝統的な空間としての縁側に類する空間について調査を行い、縁側との相違点などについて比較考察する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
内遊び時におけるこどもたちの行動特性を分析した結果について、日本建築学会の大会で発表する。そのための旅費や論文投稿費・参加費などが必要となる。また、こどもたちがより自由に自発的に行動している保育園2園(SK保育園、WK保育園)における行動特性(室内と縁側の滞在時間比率、室内と縁側の出入り量および歩行動線)の分析を進める上で、分析補助の大学生に対しての謝金が必要になる。このほか、こどもの遊び環境に関する各種学会やセミナーに参加するための参加費や旅費が必要となる。 また、今後の研究の展開を踏まえて、特徴的な縁側空間を有する保育園や日本の伝統的建築にみられる縁側などを視察する予定であるので、そのための旅費が必要となる。 さらに、アジア諸国における縁側に類する空間の調査を行う予定であるが、縁側が本来は外部に開放的な夏向けの空間であることを考慮し、これらの調査を6~10月頃に行うことにした。そのため、昨年度行う予定だった調査の一部も本年度に延期したために、前年度の調査にかかる予定の費用の一部に繰越金額を生じた。したがって、これら繰越金額は、アジア諸国における縁側に類する空間を調査するための旅費等として使用する予定である。 また、全般を通して、プリンタ・トナーやソフトなども必要になってくる。
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