近年、小児の精神・行動障害が増加し社会問題化している。このような増加傾向は遺伝的要因だけでなく、環境要因が関与している可能性を示唆している。妊娠中の母親の精神的ストレス、外的環境(騒音、大気汚染)、母体から胎児への化学物質の移行といった胎児をとりまく環境が、胎児の脳機能の発達に影響を与え、さらには生後の発達障害や心の脆弱性に影響する可能性が示唆されている。 本研究の目的は、種々の胎内環境が胎児の脳機能の発達に及ぼす影響、小児の精神・行動障害に与える影響、およびこれらの各種要因に対して脆弱性を示す感受性期の存在を胎児期の評価を加えたコホート研究により明らかにすることである。 コホート研究の対象者は1500人/年、平成24-25年度の実績では約3000人とほぼ予定通りの調査参加者であった。 研究内容として、胎児脳機能の超音波簡易検査法を確立したことに続き、行動発達と自律神経機能との関連を明らかにした。大気汚染状況に関しては、大気汚染の妊娠時期と妊娠合併症との関連が明らかになりつつあり、胎児への影響も考えられる。今後、質問票による母体ストレスに関する影響の解析を行っていく予定である。
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