研究課題/領域番号 |
23601010
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山崎 貴男 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (70404069)
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キーワード | 自閉症スペクトラム / 事象関連電位 / 顔認知 |
研究概要 |
外界の環境を感知し,円滑なコミュニケーションを営むためには,特に視覚および聴覚情報の処理が重要である.自閉症スペクトラム(ASD)では知覚レベル・知覚統合の障害によりコミュニケーション障害を生じている可能性が指摘されている.ASDは音や光などへの視聴覚過敏がある.本研究では視覚情報処理の生理学的基盤をもとに作成した視覚刺激と聴覚刺激を組み合わせた事象関連電位(ERP)により,健常者とASDの視聴覚の脳内基盤を解明する.それにより,こども達が身体的・精神的に穏やかに暮らすことができる視聴覚環境づくりに貢献することを目的としている. 我々は、高機能ASDおよび定型発達成人各10名において、Backward-masking paradigmを用いて、恐怖顔、中立顔、物体画像を正立および倒立にて閾下呈示を行い、ERPを記録した。すべての被験者において、後頭部にN1 (約100ms)とP1 (約120ms)の成分を認めた。定型発達成人では、正立呈示にて恐怖顔に対するN1が物体画像よりも有意に高振幅だった。倒立呈示ではその差は消失した。一方、高機能ASD成人では、定型発達成人でみられたようなN1の反応はみられず、正立呈示、倒立呈示とも刺激間でN1反応に差はなかった。P1成分は群間、刺激間で反応に違いはなかった。以上の結果より、高機能ASDでは低次視覚野レベルにおける表情顔の自動的視覚処理が障害されていると考えられた。そして、この障害がASDにおける社会認知の障害の神経基盤である可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自閉症スペクトラムの視聴覚情報処理に関する論文(原著論文1本、総説2本)が採択された。また、音声認知に関する原著論文を現在、投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、途中段階である運動視の視聴覚統合に関するERP研究を継続する。
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次年度の研究費の使用計画 |
被験者に対する研究協力費、解析用コンピュータの購入、国内・国際学会への参加などに使用する予定である。
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