研究課題/領域番号 |
23601011
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
恒川 元行 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (70197747)
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キーワード | 第2言語としてのドイツ語 / 移民 / 就学前児童 / ことばの発達支援 / プレスクール |
研究概要 |
■前半は、ドイツ・バイエルン州の就学前児童保育に関わる幼稚園の先生を対象としたプロジェクト「全日制保育施設におけることば教育の相談室」の成果をまとめた、ライヒャート=ガルシュハンマー/キーフェルレ(編)『全日制保育施設におけることばの教育』2011、第2章~4章の翻訳に集中した。 ■後半の第一は、日本独文学会西日本支部第65回研究発表会(2013年12月8日)における研究発表「ドイツは就学前の子どもたちのことばの教育をどう考えているか?-バイエルン州を例として-」である。バイエルン州の考え方や政策を概観し、金箱秀俊「移民統合における言語教育の役割 ―ドイツの事例を中心に―」(国立国会図書館『レファレンス』2010 年12 月号)が強調する「言語教育による統合」という見解を批判・補足した。 ■後半の第二は、「第1回研究会 ドイツと日本のことばの教育をめぐって -特に就学前児童に注目して-」(2014年2月26日-27日)の開催である。船越美穂・福教大教授(幼児教育)、松本一子・愛知淑徳大非常勤(就学前日本語教育)、竹内宏・鹿大教授(ドイツの移民政策)、平高文也・慶大教授(ドイツの言語政策)のご発表、意見・情報交換を行った。また、豊田和子・桜花学園大学保育学部教授には、このためのアドバイスをいただいた。 ■このほか、バイエルン州以外のドイツの政策を確認するため、ベルリン州教育省を再訪し、ベルリン市の外国人集住地区を視察した(12月)。また、昨年度に引き続き、日本の政策や実践を把握する目的で、「就学前児童保育でのことばの教育」に関連するTNN研修会(2014年1月、2月)、東京学芸大学国際教育センター第5回多文化共生フォーラム(同1月)、愛知県プレスクール活動情報共有・意見交換会(同3月)に積極的に参加し、情報収集・意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度は、【研究実績の概要】のとおり、まずドイツ語文献、ライヒャート=ガルシュハンマー/キーフェルレ(編)『全日制保育施設におけることばの教育』2011、第2章~4章の翻訳に取り組みんだほか、ザンダー/シュパーニアー『ことばの発達とことばの発達支援-教育的実践のための基礎』2005第2章の翻訳を紀要に発表した。 後半では、[1]日本独文学会西日本支部第65回研究発表会(2013年12月8日)において口頭発表「ドイツは就学前の子どもたちのことばの教育をどう考えているか?-バイエルン州を例として-」を行った。[2]次に、「第1回研究会 ドイツと日本のことばの教育をめぐって -特に就学前児童に注目して-」(2014年2月26日-27日)を開催し、この形で今年度の最大の課題としていた専門家・研究者とのコンタクトを実現した。[3]また、バイエルン州以外のドイツの政策の事例を確認するため、ベルリン州教育省を再訪し、ベルリン市の外国人集住地区の視察も行った(12月)。[4]このほか、昨年度に引き続き、関連するTNN研修会、東京学芸大学国際教育センター第5回多文化共生フォーラム、愛知県プレスクール活動情報共有・意見交換会に積極的に参加し、情報収集や意見交換を行った。 以上のとおり、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は最終年度であるため、おもに以下の3点を中心に研究を推進し、成果の取りまとめを目指す。 ■[ドイツにおける取組みの紹介] バイエルン州社会省のサイト「子どもの教育と保育」に掲示された情報が、質量とも充実し、ドイツの施策を知るうえで適切であると考えられることから、特に「教育計画」および「教育科目」のページを翻訳・紹介することで、ドイツの就学前児童保育に関わる真摯な取り組みのうちの最も優れた一例を日本語で参照できるようにしたい。これまで行ってきたドイツ語文献の翻訳の一部も取り込み、報告書を作成する。 ■[キーワード事典の作成継続] 上記サイトの翻訳と並行して、これを利用しつつキーワード抽出・整理作業を継続し、キーワード事典の作成を目指す。キーワードの抽出に際しては、これまでのドイツ語文献の翻訳(ライヒャート=ガルシュハンマー/キーフェルレ(編)『全日制保育施設におけることばの教育』2011、ザンダー/シュパーニアー『ことばの発達とことばの発達支援-教育的実践のための基礎』)も利用する。 ■[専門家・研究者とのコンタクト] 25年度末に実現した研究会を足掛かりにして、日本の幼児教育専門家・研究者、また実際に幼稚園に勤務する保育者との連携を深める。上記の作業過程では、日本の専門家の助力のほか、バイエルン州社会省や州立乳幼児教育研究所、ベルリン州教育省など、ドイツ側の関連機関・担当者とのコンタクトも欠かすことができないと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度に2回のドイツ出張を予定していたが、その2回目を健康上の都合により取りやめた。その分の研究費が25年度に繰り越されたが、25年度は日常業務および他の研究課題との関係から、やはりドイツ出張が1回しか実現できず、そのため次年度使用額が発生した。 26年度の研究費は、【今後の研究の推進方策等:今後の研究の推進方策】に記述した3項目のうち、おもに第3項目[専門家・研究者とのコンタクト]のために利用する。これは、[ドイツにおける取組みの紹介]および[キーワード事典の作成継続]に不可欠である。特に最終的な研究成果取りまとめの段階においては、日常的な電子メール等によるコンタクトに加え、ドイツ側関係省庁・研究所・関係者との直接的なコンタクトが重要な意味を持ってくると考えられるため、25年度に生じた次年度使用額および26年度配分額の合計をより有効に利用できる見込みである。
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