研究課題/領域番号 |
23601023
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
佐々木 諭 創価大学, 看護学部, 准教授 (70463974)
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キーワード | 地理情報システム / 小児保健 |
研究概要 |
本研究は、ザンビア国ルサカ市を調査地域とし、ザンビア国保健省、ルサカ市で保健活動を実施しているAMDA(本邦NGO)と連携し、最適配置に基づいた保健サービスの提供により、乳幼児(5歳未満児)の罹患率と死亡率の減少を目指す。最適配置手法は、従来の移動距離に基づくネットワーク分析に加え、パーソントリップ分析により、養育者の移動と滞在に基づく頻度マップを作成し、養育者のアクセスに妥当な距離範囲内にあり、居住地のみならず移動範囲からもアクセスの良い最適配置を特定するモデルを構築する。 最適配置によるコミュニティ保健活動の効果は、コントロール群(任意の地点での保健サービス介入)と介入群(最適地点での保健サービス介入)における介入前後のサーベイランス調査により、養育者の行動様式の変化、乳幼児の疾病ならびに死亡率の変化、サービス受益人口数の変化に関し統計的有意差により検定する。 2012年度は、8月と3月にザンビア国ルサカ市においてフィールド調査を実施した。チプルクスヘルスセンター管轄地域を介入地域、ンクワジヘルスセンター管轄地域をコントロール地域としてベースライン調査を実施した。2011年1月~5月に出生した新生児の全登録を行い(チプルクスヘルスセンター管轄地域536人、ンクワジヘルスセンター管轄地域339人)、6カ月児から11ヵ月児までの5カ月間毎月フォローアップ調査を実施した。あわせて、全登録新生児をGPS(Global Positioning System)を用い、地理座標を測位し、ベースマップに記載し、新生児に罹患マップの作成を試みた。フィールド調査の結果より、チプルクスヘルスセンターでは、調査期間中に17名の乳児が死亡し、一方、ンクワジヘルスセンターでは、5名の乳児が死亡した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度計画として、2回にわたり研究対象地域に滞在し、介入地域とコントロール地域のベースライン調査を実施した。ベースライン調査では、介入地域536人、コントロール地域339人の乳児を5カ月間にわたりフォローアップを行い、乳児死亡率と罹患率を調査した。乳児死亡率は、介入地域は76.1 (対人口千人)、コントロール地域は35.5(対人口千人)、主要疾患はマラリア、下痢症、呼吸器感染症などがあり、マラリアは介入地域が419.3(対人口千人)に対し、コントロール地域は386.5(対人口千人)、下痢症疾患は介入地域が585.0(対人口千人)に対し、コントロール地域は327.0(対人口千人)、呼吸器感染症は介入地域が424.5(対人口千人)に対し、コントロール地域は445.9(対人口千人)となった。あわせて、デジタル化した基盤地図を用い、地理座標情報を測定した対象乳児の罹患、死亡事例の地理的集積性の分析を行った。 最適配置分析は、基盤地図の道路・歩道データを用い、移動速度に関する情報を加えたネットワークデータベースを構築した。乳幼児の世帯から、直近の医療施設または保健医療サービスの地点までの移動距離を、GISソフトのネットワーク分析(Network Analyst, ESRI社)を使用して算出し、遺伝的アルゴリズムを用いて最適配置分析を行った。 以上の研究実績より、概ね順調に進捗していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方途は、2013年8月に調査対象地域を訪問し、介入後のデータ分析を行う予定である。ベースライン調査と同じ調査手法を用い、介入地域とコントロール地域において新生児の全数登録を行い、月齢6か月から11ヵ月までの5カ月間フォローアップ調査を行う予定である。 調査結果より、介入後の介入地域とコントロール地域の死亡率、疾病罹患率に関し、統計解析を行い、介入による効果を検証する予定である。 調査結果は、国際保健医療学会等における発表と学術誌への投稿を計画しており、研究の取りまとめと論文の執筆に取り組む予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、物品費として、GIS地図印刷用のカラープロッターのカートリッジ等の消耗品、研究打ち合わせのための国内旅費、英文論文執筆のための校正費、国内外の学会発表参加の旅費の使用を予定している。
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