研究課題/領域番号 |
23601027
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
杉浦 勉 産業医科大学, 医学部, 研究員 (40131924)
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研究分担者 |
吉田 安宏 産業医科大学, 医学部, 准教授 (10309958)
黒田 悦史 大阪大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (10299604)
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キーワード | 胎児期暴露 / 転写因子 / 胸腺細胞 / ホルムアルデヒド / 骨髄細胞 |
研究概要 |
胎盤は化学物質の侵入を阻止できないため、その結果、侵入してきた化学物質に胎児は容易に曝されることになる。本研究では化学物質胎児期曝露の影響を、モデルマウスを構築し、免疫担当細胞への影響を中心に解析することを目的としている。 最終年度は妊娠マウスへの化学物質暴露を行い、ターゲット細胞の絞込みを行った。化学物質の暴露スケジュールは、前年度同様、ホルムアルデヒド80 ppb、2週間を選択し、実験動物にはBALB/cマウスを用いた。暴露のタイミングはプラークを確認後、2日目を暴露初日とした。幼児期にホルムアルデヒドを暴露したマウスでは胸腺への影響が認められたので、胸腺細胞への影響に焦点を当て、解析を進めた。 暴露終了後、生まれた直後の胎児より胸腺を摘出し、細胞とその溶解液を調製した。最初に、細胞溶解液を使用し、転写因子の活性化をゲルシフト法で解析したところ、STAT5の活性化が観察された。また胸腺細胞をin vitroで培養し、それらのマイトジェン(ConA)に対する影響を増殖反応により評価したところ、ホルムアルデヒド暴露を受けた胎児マウスから調製した胸腺細胞は対照群と比べ、有意に高い反応性を示した。また、24時間後の培養上清中のIL-2産生も対照群よりも有意に高値であった。更には、このマウスを4週令まで飼育し、その後同様の解析を行ったところ、この胸腺細胞の高反応性は維持された状態であった。またホルムアルデヒド暴露を受けたマウスから骨髄細胞を調製し、マクロファージを分化誘導させ、そのPGD2産生能を測定したところ、暴露群で有意に高い産生量が認められた。 以上より、低濃度化学物質胎児期暴露は、より幼弱な細胞群である胸腺細胞に対し、分子レベルで何らかの変化を来たし、細胞の分化という観点からも化学物質の影響があることが示唆された。
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