自分の思いが通らない葛藤場面において乳児期の子ども達がとる主張行動は、かみつきやひっかくといった身体的方略を自己主張の方法としてとることが多い。発達に伴い、身体的方略から言語的な方略へと変化するとされているが、その変遷過程自体は明らかにされていない。従来、かみつき行動は、問題行動と捉えられたり、愛着の問題と解釈されたりすることが多く、特に、高い養護ニーズをもつ子どもが生活している乳児院等の子どもについては、発達的な要因よりも愛着の問題がクローズアップされがちである。 本年度は,保育園と乳児院の子ども達を対象に,自己主張方略が身体的方略から言語的方略へシフトを促進させるメカニズムを比較検討した。身体的・言語的自己主張行動と言語発達、社会的行動発達、愛着行動との関連を調べた結果、保育園の子ども達も,乳児院の子ども達も,養育者に愛着行動が示せることが、身体的方略から言語的方略への重要な要因であることが示された。
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