医用画像においてトレーサ(あるいは造影剤)を使用することで生理的情報を定量値として測定することが可能である.そしてこのためには動脈血中のトレーサ濃度を測定することが必要となる.動脈採血が直接的であるが侵襲性は高い.そこで撮像される医用画像から間接的に血中トレーサ濃度を測定することが有用である.しかし医用画像から間接的に得られる値と,真の値を比較する方法が存在しなかった.そこで今回,動脈血中の経時的濃度変化(入力関数)を再現したファントムを実現させた.これは内径が動脈程度の直径のチューブに挿入可能なロッド(竿状)において,先端から終端までの間隙部分の容積が時間濃度曲線と同様の形とする.このロッドをチューブに挿入し,間隙部分にトレーサが封入されることで時間濃度曲線の形を実現する.従来ポンプを使用してタンクからチューブへトレーサを循環させるファントムが存在したが,トレーサのポンプによる循環では流体の動きにばらつきがあり再現性に乏しかった.しかし今回開発し実現したファントムは間隙に封入するだけであり,トレーサ濃度の再現性が高い特徴を持つ.ファントムには放射能濃度3.0 MBq/mLのフッ素18を封入しPET/CT装置SIEMENS Biographにて撮像した.得られたデータから9秒間と18秒間の時間平均後の入力関数を表現した.これと真の値を比較することで9秒間と18秒間それぞれの時間-校正係数曲線を求めることに成功した.このことを応用することで撮像時の時間方向のスムージングが発生しても,この効果を克服することができると考えられた. 次にPETに対してMRIとの相互情報量による画像評価を試みた.相互情報量によってPETの画質評価も可能であった.このことからPET入力関数測定の物理的障害要因のひとつである空間分解能劣化の評価へ繋げることも可能であると考えられた.
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