研究課題/領域番号 |
23602002
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
湯浅 哲也 山形大学, 理工学研究科, 教授 (30240146)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 屈折 / CT再構成 / 乳癌 / 放射光X線 / 早期診断 |
研究概要 |
屈折率コントラストCTは高いコントラストで軟組織を描出することができる.この手法を乳がんの早期診断に適用するためには,低被曝化を実現することが不可欠である. 本年度は,低被曝でデータを取得するために,シリコン製Laue型角度アナライザーを用いるCT方式を考案した.この方式により,再構成に必要なデータを一回の計測で得ることができる.得られたデータからCT像を形成するための再構成方法を,幾何光学理論に基づいて考察した.本再構成方法は,幾何光学の基本方程式から得られたものであり,確固とした理論的な基盤を有する.得られた再構成アルゴリズムは,計算時間も比較的少なく,高精度にCT像を再構成することが可能である.シミュレーションにより,良好な再構成が可能であることを確認した.さらに,実現可能性を検討するために,高エネルギー加速器研究機構のビームラインBL-14CにCTシステムを構築した.これまでに,乳癌患者から切除した組織標本を撮像することで,本システムの実現可能性を実証した.得られたCT像を組織標本を比較したところ,著しい一致を確認した.従来のX線撮像では観察することのできなかった微細な構造を描出することに成功した. 従来の屈折率コントラストCT方式では,複数回の計測が必要であったのに対して,本提案方式では,一回の計測で3次元断層画像を得ることが可能となり,被曝量を少なくとも従来の半分に低減することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
データ取得方式,再構成アルゴリズム,実験ともに当初の計画以上の成果を挙げている.とくに,これらの実現可能性を,実験により実証できたことが何よりの成果である.得られた乳癌病理サンプルの再構成画像を共同研究者である名古屋医療センター病理検査科の市原周医師に評価していただいたところ,病理学的に非常に有効な情報が得られているとのことであった.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,提案したCT撮像方式の基本的な撮像特性について,検討を行う.とくに,空間分解能や濃度分解能は,システムの性能を評価するために,不可欠である.実験およびシミュレーションにより,どこまでの性能が得られるかを厳密に評価する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
所有する計算機が老朽化してきているので,高スペックの計算機およびソフトウェアを導入する予定である.また,今年度得られた成果を,国際会議にて報告するための旅費も計上する.
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