研究課題/領域番号 |
23602002
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
湯浅 哲也 山形大学, 理工学研究科, 教授 (30240146)
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キーワード | 屈折コントラスト / コンピューテッド・トモグラフィー / ラウエ結晶アナライザー / 放射光 / 乳がん |
研究概要 |
提案する,アナライザー結晶として,シリコン製ラウエ結晶を用いたDFI (Dark Field Imaging)法に基づく屈折コントラストCT撮像システムを高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリー内にあるビームラインBL-14Cに構築し,撮像実験を行った.下記の成果を得た.また,本システムの撮像過程をシミュレートするためのプログラムを作成した.さらに,CS (Compressed Sensing)に基づく新しい再構成方法を検討した.詳細を以下に示す: (1)空間解像度の評価:テストチャートを用いて,本システムの空間解像度を評価した.撮像実験により,本システムは約10ミクロンの空間解像度を有することがわかった.現在,論文として取りまとめており,近々投稿する予定である. (2)生体試料の撮像:乳がん,眼球,石灰化を有する動脈,腎臓などの患者から切除したサンプルを撮像し,明瞭な3次元再構成画像を得た.とくに,乳がんサンプルでは,乳管および癌部位を明瞭に描出できた.現在,論文として取りまとめており,近々投稿する予定である. (3)シミュレーターの開発:被写体内のX線の伝播を幾何光学的に計算し,アナライザー結晶に入射させる.結晶のロッキングカーブにより,検出器により検出されるX線強度を求めることができる.ここで,ロッキングカーブは動力学的理論に基づき計算した.サンプルを回転させながら,以上の計算を繰り返すことで,投影画像を取得する.得られた投影画像から,提案した再構成方法を用いて,再構成画像を得る.本シミュレーターを用いることで,再構成画像の画質に及ぼす,撮像パラメーターの影響を知ることが可能になった. (4)新しい再構成方法の検討:CSに基づいた,より少ない投影から再構成画像を得る再構成方法を考案した.ファントム実験から得られたデータに対しては,良好な結果を得ている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに,撮像方式の特性評価および医学応用とくに病理応用の基礎的な検討を終えた.研究実績の概要で述べたように,以下の成果を得ていることに鑑み,当初の目標は,現段階ですべて達成できたと考えている: (1)空間解像度の評価 (2)ヒト病理サンプルの撮像 (3)シミュレーターの開発 さらに,本年度は新しい試みとして,より少ない投影数からでも良好な再構成画像を得ることができる再構成方法の検討を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,高エネルギー加速器研究機構での実験は3回を予定している(初回は5月9日から5月16日と確定).初回の実験では,乳がんの一種であるLCISを明瞭に撮像することを目標としている.これまで,スライス後染色された病理サンプルとしての観察の報告があるが,3次元的な観察がなされた報告はない.もし,明瞭に撮像されれば,病理学へのインパクトは大きいものとなる.2回目および3回目の実験においても,異なる種類の乳がんのサンプルを撮像する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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