研究課題/領域番号 |
23602005
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大久保 真樹 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (10203738)
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研究分担者 |
和田 真一 新潟大学, 医歯学系, 教授 (80105519)
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キーワード | X線CT装置 / 変調伝達関数(MTF) / 画像再構成関数 / 点広がり関数(PSF) / 空間分解能 / 肺がん / CT検診 |
研究概要 |
肺がんが疑われる症例を集めた胸部CT画像データベースの画像群を用いた。このデータベースの画像群には充実性結節陰影や、すりガラス状陰影(Ground Glass Opacity;GGO)など様々な性状の結節が描出されており、十分な症例数(n=67)が集められている。画像の再構成関数には、標準的な空間分解能特性を持つ再構成関数(A)と、高空間分解能型の再構成関数(B)の2種類が用いられている。そこで、画質変換処理法を利用して再構成関数Bを用いて得られた画像の画質を、再構成関数Aの画像の画質に変換した。変換後の画像(B→A)と、オリジナルの再構成関数Aによる画像(元画像)を比較した。その結果、全症例において良好な変換処理が可能であることが示された。症例(個人差)による影響、結節の形状や濃度によらず安定した処理結果が得られた。変換画像と原画像との引き算画像における標準偏差は6.0±1.8 HU(全症例の平均値)となり、変換精度が高いことが確認された。さらに、画質変換処理法を従来の汎用的な画像フィルタ処理法と比較するために、MeanフィルタとMedianフィルタを用いた(いずもれ処理Matrix数は3×3、5×5、7×7の3種類とした)。再構成関数Bによる画像にMeanフィルタ処理を加えた結果、原画像との引き算画像における標準偏差はMatrix数が3×3の場合に最小値48.1±7.3 HUとなった。同様に、Medianフィルタ処理ではMatrix数が5×5の場合に標準偏差が最小値57.9±60 HUとなった。いずれも画質変換処理法における値6.0±1.8 HUよりもかなり大きい値となり、変換精度が低いことが明らかとなった。 以上の検討を通し、画質変換処理の精度を臨床的・実用的に評価し、その妥当性を検証することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、考案した画質変換処理法の精度を臨床画像データベースを用いて臨床的・実用的に評価することを予定していた。十分な症例数(n=67)の画像を用いて、充実性結節陰影やすりガラス状陰影など様々な性状の結節が描出されている画像に対し画質変換処理法を適用した検討が可能であった。さらに、従来の汎用的な画像フィルタ処理法との比較検討を加えることができた。いずれの検討においても期待通りの良好な結果が得られており、当初の計画通りの進捗状況である。
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今後の研究の推進方策 |
最終目標であるコンピュータ診断支援(CAD)における画質変換処理法の有効性を調べる。CADは富士通(株)(研究協力者)が開発を進めてきたシステムを用いる。このCADでは、標準的な空間分解能特性を持つ再構成関数(A)が推奨されている。そのため、高空間分解能型の再構成関数(B)による画像を用いた場合にはCADの診断性能が大きく低下することが、これまでの予備実験により確認されている。そこで画質変換処理法を適用し、再構成関数Bを用いて得られた画像の画質を、Aの画像の画質に変換してからCADに入力する。これによって、CADの診断精度低下の改善を図る。推奨されている再構成関数Aを用いた場合の受信者動作特性(Receiver Operating Characteristic;ROC)と同等な精度まで向上させることができるかについて判定する。画像データは、今年度用いたデータベースの画像群を利用する。十分な症例数(n=67)があり、ROC解析においても精度の高い検討が可能と考える。また、従来の汎用的な画像フィルタ処理法(MeanフィルタおよびMedianフィルタ)を用いて同様にROC解析を行い、画質変換処理法の有用性をより明確にする。本法を確立することができれば、日常臨床で再構成関数Bを使用している施設でも、再構成関数をAに変更することなくCADの導入が可能となる。CADの導入・実用化へと直結する手法であり、肺がんCT検診の普及にも大きく貢献する可能性が高いことを示唆し、本研究を完遂する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度までに必要な物品購入は完了していることから、次年度はそれらの物品の維持管理や、データの構築・保存に関わる経費、および研究成果を英語論文で発表する際の英文校正費や印刷費に充てる計画である。特に最終年度であることから、これまでの研究成果を確実に保存し今後の研究につなげていくために、使用したデータや生成物(各種プログラムや膨大な解析・出力結果など)の保存に関わる経費が主な使用予定となる。
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